不動産のプロに聞く 豪州不動産事情
第91回
豪州住宅価格の上昇
2019年11月、オーストラリアの住宅価格は1.7%上昇しました。中でもシドニーが2.7%、メルボルンが2.2%上昇しており、この2都市がオーストラリア全体の上昇率をけん引しています。金融情報サービス会社コアロジック(CoreLogic)の調査責任者であるティム・ローレス氏によると、18年4月以来オーストラリア国内で最初の年間住宅価格の上昇です。
シドニーとメルボルンの不動産市場は、金利の低下と住宅の供給不足により不動産価格を押し上げており、これは16年ぶりにオーストラリア全土の住宅価格の最大の上昇となります。また、準備銀行の75%の利下げやオーストラリア健全性規制庁(APRA)からのローン政策の緩和、および選挙の結果に続く税制改革に関する不確実性がなくなったことなどの相乗効果でもあると思われます。
シドニーの住宅の中央値は95万6,249ドルとなり、今月は3万7,900ドルの上昇でしたが、今年1年では4%の増加を示しています。シドニー住宅価格の月間の増加としては、1988年以来最大の値でした。メルボルンの住宅の中央値は77万4,023ドルとなり、今月は2万3,000ドルの上昇でした。今年1年で見ると2.9%増加しています。メルボルンの住宅価格としては、2015年以降最大の上昇です。ただしこれらの値は、ピーク時と比べるとシドニーは8%低く、メルボルンは4%低い状態であり、まだ上昇の余地はあると見ています。現在の市場動向を鑑み、不動産価格の回復は20年まで続くという予想が多くなされているようです。
コアロジックのデータによると、価格の上昇は均一ではなく、高級住宅地が低価格の郊外よりも大きな上昇傾向にあります。過去1年間で上昇率が最も高かった4つの地域は、「メルボルン中心地の東部」、「メルボルン中心地」、「シドニーのヒルズ地区」、「ハーバー・シティ西部」です。買い手が再び高級住宅地の不動産を取得するにつれて、この上昇率は比較的低価格の郊外に向かって放射状に広がる予想がされています。
スターツ・インターナショナル・オーストラリア
代表取締役
寺田環
NSW州、VIC州不動産業者免許(フル・ライセンス)所持