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日豪フットボール新時代(NAT)第113回「快挙」

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第113回 快挙
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

マリノスではその揺るがないキャラで“ボス”という愛称で親しまれているポスタコグルー。昨年のJリーグ対広島戦で筆者撮影
マリノスではその揺るがないキャラで“ボス”という愛称で親しまれているポスタコグルー。昨年のJリーグ対広島戦で筆者撮影

豪州フットボール絡みの快挙が続く。やはり、その筆頭はアンジ・ポスタコグルーのJリーグ制覇ということになる。その詳細は後に触れるとして、他の快挙をおさらいしておく。

日本のお隣の韓国では、国内リーグKリーグが閉幕。豪州代表FWでAリーグ得点王の実績もあるアダム・タガード(水原三星)が得点王に輝いた。長年、Jリーグに比べて、環境の違いなどからオージー選手が苦戦を続けてきた韓国で、ようやくタイトル獲得という結果が出た。日本での2010年、11年と2年連続で得点王になったジョシュア・ケネディ(元・名古屋)以来のアジア主要リーグでの快挙は、素直に称賛に値しよう。後は、代表でコンスタントに活躍してくれれば、本物だ。

先月号でも取り上げた女子フットボール界最高のストライカーのサム・カー(チェルシー)。惜しくもバロンドールは7位に終わったが、12月6日に発表された英ガーディアン紙選定の「世界女子フットボーラー・トップ100ランキング」では、バロンドールに輝いた米国代表ミーガン・ラピノーらを抑えて栄冠に輝いた。これで、彼女は自他共に認める豪州史上最高の女子フットボーラーとしての地位を不動のものにしたと言えよう。

さて、アンジ・ポスタコグルーの話題に移ろう。Jリーグきっての名門ながら、15年優勝から遠ざかっていた横浜F・マリノスを率いて2年目の今季。ポスタコグルー監督が率いるマリノスは、昨年の攻撃的だが守備に難ありというチームをさらに超攻撃的に鍛えあげて、「相手チームの選手も称賛する」フットボールでリーグを席巻した。何があっても寸分もブレない監督の超攻撃的スタイルは国内外の注目を集め、リーグ後半戦の圧倒的な成績を残して、一気に頂点に駆け上がった。ブリスベン時代から監督をよく知る筆者は彼の成功を疑わなかったが、ここまで自分のスタイルを早期に確立させて、2年で日本を席巻するとは思いもよらなかったと、ここで告白せねばならない。

カーにしても、ポスタコグルーにしても、いまだかつて、それぞれの分野で海外でここまで顕著な成績を残した豪州人の前例はない。それらの快挙を喜ぶのは良いが、それが全てではない。男子は世代交代後に深刻なタレント不足に陥っているし、国としての成績では自国開催のアジア杯以来、まだ快挙と呼べるものはない。各分野での進歩は認めつつ、更なる進化のために止まっている時間はないはずだ。


【うえまつのひとり言】
Aリーグが開幕して、最初の対戦がほぼ一回りしようかというタイミングだ。11チームの変則開催の今季だが、今ひとつ盛り上がりに欠ける。毎節1試合のABCでの地上波中継も始まっているが、なかなかリーグの人気は上向かない。男子の国内でのスター不足は致命的。毎年選手が激しく入れ替わる“リサイクル・リーグ”に未来はあるのか。

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