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医療特集2020「スマホ首」に要注意!?

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医療特集2020「生活習慣病」とその予防法

かつては加齢とともに進行すると考えられていたことから「成人病」とも呼ばれていた「生活習慣病」。近年は子どもの頃からの生活習慣が基盤となることが判明し、その名が改められたが、では「生活習慣病」にはどのようなものが該当するのだろうか。本記事では、「生活習慣病」を代表する疾病から、近年問題となっているスマホ首などにもフォーカスを当て、それぞれの専門家による解説を紹介していく。

スマホ首
協力=メトロ・フィジオセラピー、奥谷匡弘先生

スマホ首というとスマートフォンが生活に浸透してきたここ最近の生活習慣病という印象を持ちますが、業界では以前から「ストレートネック」という名前で認識されていました。頚椎胸椎腰椎は本来緩やかなS字カーブを保っていますが、顎を突き出した前傾姿勢を長時間続けることで、頚椎本来の緩やかなカーブがなくなり、真っすぐになってしまうことで首の痛みなどの諸症状が出る状態のことです。デスク・ワーカーに多く見られ、また、男性よりも女性の患者の割合が高い症状です。

頭の重さは脳、頭蓋骨、両目、歯、顔の皮膚と筋肉などを合わせて約5キロで、ボーリングのボールとほぼ同じ重さになります。その頭を支えている首と肩の筋肉は、太ももやお尻の筋肉と比べるととても小さく細いものです。人間本来の生活の中、首は絶えず多方向に動かす必要があり、それゆえに軽装備な筋肉になっているのです。

しかし、今日の生活では長時間、同じ姿勢でじっと動かずスマートフォンを操作するようなことも多くあります。毎日の平均的なスマートフォンの使用時間は3時間15分ほどと言われています。これに仕事や勉強で、デスクやパソコンに向き合っている時間を加えると、恐ろしく長い時間同じ姿勢を続けていることになります。運動不足により筋肉の弱化は加速しますが、頭の重さは変わらりません。弱った筋肉で支え続けなければならないため体が助けを求めて痛みを発します。

具体的な治療法

首は小さな筋肉の集合体で可動域が大きい代わりに筋力は強力ではありません。しかし、頭の重さ約5キロと両腕の重さ5キロ×2を支えなければいけません。結果、首の筋肉が肉離れを起こしたり、首の関節が炎症したり、椎間板へルニアによる炎症が引き起こす痛みや神経痛が発症します。

その他、頭痛、めまい、吐き気、肩の痛み、背中の痛みなど多種多様、約300種の症状が世界的に認知されています。人によって症状が違うということを十分に認識しておきましょう。

スマホ首の原因となる要素は全部で6つあり、それらは自助努力で変えることのできない要素、と変えることのできる要素の2つに分類できます。自助努力で変えることのできないものは以下の通りです。

  1. 重力(約9.81 m/s2で身体を床に引っ張っている)
  2. 頭の重量(約5kg)
  3. 上腕の重量(約5kg×2=約10キロ)

一方、自助努力で変えることができるのは以下の通りです。

  1. 姿勢を正しく保つ(頭を首の真上に保つ)
  2. 首や背中(特に上部胸椎)の関節の柔軟性
  3. 正しい姿勢を維持するために必要な筋力と使い方

変えることができる要素の中ですぐに対処できるのは姿勢です。姿勢を改善する際にポイントになるのが首の根元で、背中との接合部に出てくるコブです。コブに人差し指、中指、薬指をあてながら両肩甲骨も後ろに引いて背中を真っ直ぐにし、そして首を後ろに引いてコブがほぼ平らになるように大袈裟に姿勢を変えます。この状態を15秒間維持した後は楽にしてその後は身体を自然に任せます。これを30分に一度は行い、コブの出た負担のかかる姿勢を頻繁に断ち切ります。

次に、長時間に渡って前傾姿勢をしていたせいで硬くなった背中の上部(首の根元のコブの真下から15センチのあたり)を集中的にストレッチして関節の柔軟性を改善します。また、前傾姿勢では呼吸が浅くなりやすく、首や胸の上部にある筋肉を呼吸に過度に使用してしまうため、緊張状態の、特にあばらの1番と2番の関節や首の関節をモビライゼーションでほぐします。

長年の悪い姿勢のために、本来姿勢の維持に使うべき筋肉が休眠状態になっている方も多くいます。この場合は本来の筋肉を使えるようにするために、アクティベーション・トレーニングを行います。まずは正しい筋肉を使う感覚を体に覚えさせ、徐々に負荷を上げて筋トレを進めます。頭、首、両腕を良い姿勢で維持できるフルスペックに戻すことで、再発予防にもなり、「肩こり、頭痛持ち」なんていう肩書を自分に貼る必要はなくなります。

スマホ首への対策

生活習慣病、スマホ首に対する対策&予防のための心掛けとして、いくつか重要なポイントがあります。まずは、起きてから就寝までの間、どのような姿勢をどのくらい取っているのかを把握することが大事です。効果的にスマホ首を予防するために、スマホの使用時だけではなく、下を向いて行う作業(例:料理、読書、ミシンの使用など)や長い時間同じ姿勢でいる作業中(コンピューターの使用や運転など)には特に姿勢を意識し、作業の途中に姿勢を修正するひと息を頻繁に取りましょう。

スマホ首はスマートフォンを使用している時の姿勢だけではなく起きている全ての時間の姿勢の積み重ねの結果であることを認識しましょう。

  1. デスクワークの際、卓上型パソコンではスクリーンの中心を姿勢を正した時の目線の高さちょうどに設定します。ノート型パソコンの場合はスクリーンを目線の高さに上げるためにスタンドと外付けキーボードとマウスを使用するか、目線の高さに設定した外付けモニターにつなぎノート型パソコンのキーボードとマウスを使用するなどの工夫をしましょう。人間工学的に負担が少なく効率の良い環境を整えることが大切です。
  2. スマホを使用する時はスクリーンを目線の高さにして使うためにクッションや肘掛けなどを上手に使って工夫しましょう。
  3. スマホを置いてこまめに休憩しましょう。休憩時間はトイレに行く、水を飲みに行くなど、短くて構いません。スマホの使用開始ごとにコブの出ない真っすぐな姿勢を15秒間維持する習慣をつけるようにしましょう。目安は20~30分ごと。1日中スマホを使用するのであれば、できるだけ細かく休憩を取り、首や肩の筋肉が疲労しないように心掛けましょう。

男女による違い

頭の重さに男女差はありませんが、首や肩の筋肉量や筋力には差があります。また、髪が長ければその分重さも加わります。女性は胸の重さも加わりますので、女性の方がスマホ首になりやすいと言えるでしょう。

女性の方は、首の後ろのコブを一度認識すれば美醜の面から姿勢に対する意識を高くされるので、症状が改善しやすいように思います。男性は悪い姿勢をしていても、女性より首回りに筋肉があるのでスマホ首を含めて姿勢に関係するさまざまな症状を発症しにくいですが、痛みを感じなければそのまま悪い姿勢を続けてしまうので、かなり症状が悪くなるまで治療にいらっしゃらないケースが多いように思います。やはり痛みが出なければ、「治したい!」「変えたい!」という意欲は出ないようです。

実際の症例紹介

スマートフォンでゲームを長時間、連日楽しんでいるJさん。オフィス・ワーカーなので日中は卓上型のコンピューターを1日9~10時間使用しています。バスで通勤の間はスマホで下を向きながらゲームをプレイし、食事中も動画を見たりと、起きてから寝るまで絶えずスクリーンを見ているという生活を続けていました。

肩凝りはいつからかも分からないくらい何年間も続き、ひどくなると時々マッサージなどに通っています。最近、ハマってしまったゲームがあり、スマホでのゲームの時間が増えているとのことです。肩凝りもひどくなり、次第に後頭部や側頭部、そして前頭部や目の後ろにまで頭痛が出るようになり、ひどい時は吐き気やめまいを伴うようになってしまいました。行き着くところまで来てしまったと思い治療を決心されました。

スマホ首といっても必ずしも首に痛みが出るわけではありません。肩凝りや頭痛もその一種です。色々な症状が混合して発症することも多々あります。Jさんは首の痛みだけではなく、肩凝りと頭痛のトリプルの症状が発症してから来院されたのでした。

治療では日中のデスクワークのスクリーンや椅子、机の位置を正しく調整し、スマホを目線の高さで使えるように膝の上にクッションやカバンを乗せ、その上に肘を置き、腕を高い位置で固定しスマホを持った手が目線の高さに近くなるようにしました。スマホの使用時間を15~30分以内の細切れな時間にし、頻繁にコブをチェックし、姿勢を修正して頂きました。同時に、背中の筋肉を強くするために筋トレを行って頂き、背中の柔軟性を向上させるために背中のストレッチも同時に行って頂きました。

また、どれくらい背中上部を後ろに反れるか柔軟性を数値化して背中の硬さを認識して頂きました。その結果、前傾姿勢になっており、柔軟性が欠けていることが分かりました。この状態が進行すると、後ろに反るには折れるしかなく、更に前屈みの姿勢が悪化し、真っすぐ上を向くことができなることもあります。また、骨密度の低下と共にいつの間にか骨折し大きな痛みを生じることもあり得ます。

頭痛には施術で治療を行い、週1度の診察と処方した姿勢の意識を高めることを含めた自主トレで運動療法を行い最初の2週間で症状は改善しました。症状がなくなったところから、予防のために必要な筋トレやストレッチに更に重点を移し、リハビリを6週間行いました。根本治療を目指すことにより、慢性的に出ていた肩凝りなどの症状を最小限に抑え、少しのセルフケアで管理できるようになるところまで達成できました。

プロフィル○メトロ・フィジオセラピー&インジュリー・クリニック主催。APA認定筋骨格系フィジオセラピスト。専門は顎関節症治療と頭痛治療

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