第8回 為替ヘッジとは?
経済ニュースなどで為替ヘッジという言葉を耳にしたことはありませんか?今回はこの為替ヘッジという言葉について解説します。
為替ヘッジとは、為替が変動すると困る人や企業が、為替の変動からの影響を避けるための対策を行うことを言います。為替ヘッジにはさまざまな方法が考えられますが、ニュースで取り上げられる場合は、為替予約のことを指していることが多いようです。
為替予約とは、為替フォワード取引とも言い、将来の取引に適用される為替レートを今のうちに確定してしまうことです。例えば、豪州から商品を輸入する日本の企業が商品の支払いを3カ月後に控えているとします。支払いは豪ドルで行われることになっており、商品の卸値も既に決定しているとします。この時、もし3カ月後に円安になると、必要な豪ドルを購入するための円でのコストが増えてしまいます。卸値が既に決定しているため、これは利益が減ることを意味します。そこで、為替予約を用いてレートを今のうちに確定してしまうのです。これにより3カ月後の相場にかかわらず確定したレートで決済ができるため安心というわけです。
ところで、為替予約をして確定するレート(フォワード・レート)は、現在のレート(スポット・レート)と同じではありません。フォワード・レートは、スポット・レートに両通貨の金利差を調整して計算されます。計算方法についてはここでは触れませんが、金利が低い通貨を売って、金利が高い通貨を買う場合、将来の決済日が先になるほどレートは有利になります。
為替予約は主に輸出入企業に用いられるため、一般の人にはあまり関係がないように思われるかもしれません。しかし、一般投資家にも人気が高い、外国資産に投資する投資信託ではよく利用されています。例えば、米国債へ投資する投資信託には、米ドル売り円買いの為替予約を行うことで、換金時の為替変動リスクをなくしているものがあります。この時、レートは米ドル金利が円金利より高いことからスポット・レートよりも不利になっているのですが、この差のことをヘッジ・コストと言い、投資から得られる利益はこのコスト分だけ減ることになります。一方、ヘッジされていないものは利益が(手数料や税金を除き)満額得られますが、日本円で受け取る場合、換金時の為替次第で利益が大きく失われる可能性があります。
KVB Global Markets
取締役日本部門ヘッドチーフFXカスタマー・ディーラー
山田悟