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第142回 御頭神事/書家れんのつきいち年中行事

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第142回
御頭神事(おかしらじんじ)

ご機嫌いかがですか、れんです。

別段花いじりが好きというわけではないのですが、頂いた鉢を無碍(むげ)にはできず、全くの素人ながら教室に置いて水やりをしております。

胡蝶蘭が5つ、シクラメンの鉢、カネのなる木と幸福の木が1つずつ。中でもこのシクラメンを頂いたのは2013年の8月のこと。今に至るまで毎年新しい葉を出し、花を咲かせ、種を付けています。その種で芽を出した鉢もあります。胡蝶蘭も葉が生きている限りは新しい茎が伸びて立派な花を咲かせます。物言わず静かに成長する姿は健気でありながら芯の強さを感じさせ、つぼみが付いて花が開けばうれしいものです。

実家の母とも花の話をするようになりました。こういうことも年齢を重ねた結果ということになるのでしょうか。今年花が落ちてしまった蘭もまた来年大輪を咲かせると思うと生きる楽しみとなりますね。

さて天皇家の先祖神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)っている所と言えば三重県伊勢市にある伊勢神宮です。神宮の鳥居前町(とりいまえまち)として発達した伊勢市は神都の異名を持つ伊勢志摩の中心都市です。ですから伊勢市=伊勢神宮のイメージがあるのは否めません。しかし市内には他の神社も存在しています。

毎年2月の第2土曜日、三重県伊勢市御薗町にある高向(たかぶく)大社では「高向の御頭神事」が開催されます。

高向大社は奈良時代である天平3(731)年を起源とする由緒正しい神社で、須佐之男命(すさのおのみこと)とその一族7神を祭祀(さいし)しています。須佐之男命は天照大御神の弟神ですね。

平安時代末期である養和年間、全国的な天候凶変や悪疫(あくえき)の流行によって多くの犠牲が出ていました。その時に村で神童と呼ばれた少年が御神体の御頭を出してきて、清めの舞を踊りながら郷内を回って悪霊を祓(はら)い去ったことが始まりのようです。現在は国指定の重要無形民俗文化財になっています。

神事当日の午前中、大社では笛と鼓に合わせ、奉納の舞が行われます。早朝から大社(かみ)さんと鏑(かぶら)さんの2体の御頭が、大社、会所、祷屋(とうや)宅にて「七起こしの舞」を舞います。そして午後、御頭は地区の家を1軒ずつ回ります。ふれ太鼓を先頭に御頭を担いだ若者の一行が「ふくめもの召しましょうよ」と叫び「布久目物(ふくめもの)」つまり金一封を受けながら人びとの災厄を一身に引き受けて回ります。

夜には「打ち祭り」と呼ばれる祭典があります。太鼓を先頭に、松明(たいまつ)、御頭の順に2組の勇壮な行進が始まります。地元の青年達が交代で叫び声を上げながら御頭を激しく頭上で旋回させる「口取(くりと)り舞」を舞うのです。

祭の最後、夜の12時近くに「切り祓い」という、御頭を切る所作が行われます。昼間に集めた人々の災厄を背負った御頭に身代わりになって死んでもらうことで全ての厄を祓い、無病息災を願います。

では左の作品をご覧ください。行書の「御頭神事」です。当たり前ですが書は中国大陸で生まれたもの。そのスタイルは唐様(からよう)です。これに対し平安時代中期から日本で独自に発達したスタイルは和様と言います。和様は仮名に合うように、つまり漢字かな混じりの和文の全体感を整えるために、漢字も柔らかく丸みを帯びています。ですから仮名のない中国の書とは一線を画す形となっています。行書、と一口に言ってもその背景にはさまざまな歴史があるのです。

和様は江戸時代にその形式美をさらに突き詰めて、歌舞伎などに現在も使われている勘亭(かんてい)流の書体へと発展していきました。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.amebaownd.com / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub / インスタグラム: instagram.com/renyano

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