弁護士法人伏見総合法律事務所の高橋健氏は、京都を拠点にしながらオーストラリア法務にも積極的に取り組んできた。その特色ある立ち位置を生かして活躍する同氏に、強みなどを伺った。
――高橋先生の得意分野は何でしょうか。
日本でオーストラリア法務を専門的に取り扱う弁護士は少ないため、「日系企業のオーストラリア・ビジネス法務」を強みとして積極的に取り組んでいます。また、依頼者は日系企業ですので、オーストラリア市場への進出等を追求しつつ、事業全体の軸足は日本国内のビジネスにあることが多いため、純粋な日本国内のビジネス法務(契約書リーガル・チェック業務等)のニーズにも対応しています。言わば「オーストラリア法務にも対応できる、日本の法律顧問弁護士」という立場です。他にも中国や韓国、アメリカや東南アジア現地の弁護士とのネットワークもあり、海外企業との取引を行う、元気な日系企業(特に中小企業)からの依頼も多いです。
――貴所のサービス内容、対応されている州についてお聞かせください。
主にNSW州とQLD州を中心に、1)日系企業のオーストラリア・ビジネス法務案件と、2)日豪に資産を有する個人の方の遺言・相続案件に対応しています。1については、日系企業が豪州にビジネス展開する際の「i.(進出前の)国際間取引」「ⅱ. 進出」「ⅲ. 事業展開」「ⅳ. 撤退」の各フェーズで、法務面からサポートしています。ⅰの進出前の国際間取引については、英文ビジネス契約書のチェック業務が中心で、現地法の詳細な調査が必要でなければ、当職のみでサポートしています。ⅱ、ⅲ及びⅳは、現地での手続きや法務知識が必須なので、現地弁護士と連携を図ります。2については、例えば日豪に資産を持つ個人が遺言書を作成する場合、基本的には両国それぞれで遺言書を作成すべきと考えられ、その際の日本サイドの遺言書作成のサポートがあります。また、日本で発生した相続手続きの中で、一部の相続人がオーストラリアにいるケースや、日本の遺言書を用いてオーストラリアで相続手続き(Probate手続き等)を行うケース等があります。
――差し支えない範囲で、実際の案件で印象的だったものを教えてください。
オーストラリア法務案件でクライアントが日本の弁護士に求めていることは、「オーストラリアの専門家とのコミュニケーション」と「日本国弁護士としてのビジネス法務のセンスから問題点を発見・整理等すること」だと感じています。前者では、単に両者の間に立って連絡事項を伝えるのみならず、現地専門家と当職との良好な関係性をバックボーンに、日本のクライアントが懸念している事項等を察知し、現地専門家にオブラートに包みながらもしっかりとリクエストします。IT活用で海外との連絡もタイムリーに取れますが、やはり直接会って打ち合わせ等できないことから、細部まで伝わりきらない心配を解消することがクライアントの満足につながると日々感じています。
後者は日本国弁護士として日々、国内のビジネス法務対応で培われた経験やリーガル・マインドを駆使して、当該オーストラリア法務案件の問題点等を発見・整理し、現地専門家に質問する作業です。現地の専門家と協力しながら案件を無事にクローズできた際はクライアントからも一定の評価を頂くだけでなく、日本の弁護士としてニッチな分野であるオーストラリア法務に取り組んだことで、広い意味で社会の役に立てたと、やりがいや充実感を感じます。定期的なオーストラリア出張や打ち合わせ等を通じて、現地の専門家と綿密なコミュニケーションを心掛け、迅速かつ柔軟に対応できるよう努めています。
高橋健
日本国弁護士、京都弁護士会所属。2008年立命館大学法科大学院卒業、同年に司法試験合格。09年司法研修所を修了し大阪弁護士会・弁護士登録。13年伏見総合法律事務所にパートナー弁護士として移籍。18年NSW大学Institute of Languages English for Lawコース修了。大阪トップランナー育成事業におけるハンズオン支援外部専門家としても活動し、関西圏の中小企業の法務面をサポート。母校の立命館大学法科大学院の非常勤講師として「企業法務」の講義を担当。豪州には、年に数回出張している。