第27回:花の女王様
こんにちは。いけばな講師をしています、Yoshimiです。夏から秋にかけて私が花市場で魅了される花と言えばダリアです。けれど茎がシャクシャクとセロリのような、しかも中が空洞になっているので、投げ入れるいけばなに対しては撓(た)めも効きづらく、剣山とも相性が特に良いようにも思いません。また見た目が奇麗に咲いていても、実際に古いものであると水切りしている段階でパラパラとほとんどの花びらが落ちてしまう場合があります。そんなことを繰り返していても、また手に取って買ってしまうほど、ダリアには引き込まれるような魅力があります。
花器を使って花をいける方法以外に、水源を取りつつも絵画のように壁にいけばなをいける方法があります。私がシンガポールで華道教室をしていた頃、小さなお子さんがいる方やお花を飾りたいけれど子どもに花瓶を倒されたり、場所がないから花をいけられないと言っていた方々に向けて、教室とは別でこの壁作品を題材にして定期的にワークショップをしていました。
主格になるものを先に枝や葉などで骨組みして、その後にフォーカスになるものや、それらを支える従枝を入れていきます。最後は壁や扉、椅子の背など引っ掛かる場所を見つけて掛けるだけです。場所も取らないし、無機質な白い壁には奥行きができて奇麗ですし、場所を考えればその場を演出できます。オーストラリアのユーカリなどはよく木の皮が剥がれて落ちているので、それらを拾ってワイヤーで組んでみると、簡単に写真のようにもなります。
爽やかな色合いの花瓶に、シダの葉を入れダリアを挿すと、まるで貴婦人が座っているかのような風格のあるいけばなが誕生します。花に技巧を施さず、ただ単に挿しているだけですので簡単です。ポイントは一緒に入れる葉物間に空間が作られていること。先ほどの木の皮を組んだものに淡雪手毬(あわゆきてまり)という名前のダリアをポンポンといけると、名前の通り淡雪のような軽やかな可愛いらしさを感じることができます。さまざまな表情を持つ魅力溢れるダリアは、言葉通りに花の女王様のようです。
大変申し訳ございませんが、現在のところ東京オリンピックで草月流お家元が関わりました花火が打ち上げられることはございません。本年1月号で誤解を招く情報がありましたことをお詫び申し上げます。
Yoshimi
草月流華道講師。幼少の頃から花を嗜む。学生の頃、本格的に活動を始め大阪高島屋に出展。兵庫県議会公館迎え花を担当。シンガポール駐在中に趣味の油絵といけばな展をシンガポール高島屋で行う。現在はシドニーのセント・アイビスのスタジオで華道教室フラワー・イン・ライフ(www.7elements.me)を開講