第67回 日豪プレス法律相談室
世界の「ながら運転」罰則事情
運転者が運転以外のことに意識を向けることの危険性はオーストラリアでも問題になっており、スマホ「ながら運転」罰則強化などの対策が講じられています。例えば今年8月、ブリスベンで信号待ちの間に車のソケット充電器にスマホをつないだドライバーが、携帯電話の違法使用に対する罰金の最高額を科せられるという制裁を受けました。
ドライバーの不注意が原因で起きた交通事故の死傷者に対する社会懸念は、オーストラリアだけではありません。注意力散漫なドライバーによる自動車事故は、世界中で問題になっています。こうした社会懸念に対応するため、多くの国では法律を厳しくしています。
例えば日本では、昨年の道路交通法改正により、携帯電話を保持して通話若しくは画像を注視した場合の反則金が、普通車ならこれまでの3倍(6,000円から1万8,000円)になりました。この法改正は、交通事故件数の上昇によって促されました。2018年中、「ながら運転」に起因する交通事故の件数は2,790件発生し、13年の2,038件と比べて約1.4倍に増加しています。 世界に目を向けると、かなり厳しい法律を設けている国もあり、オマーンでスマホ「ながら運転」で捕まった場合、最長で10日間の刑務所行きになります。
アメリカ合衆国では、運転中の携帯電話の使用に関する国内法はなく、それぞれの州が罰則を定めています。携帯メールをしながらの運転の罰金は、サウス・キャロライナ州は25ドルと少なく、一方でユタ州では750ドル、それに加えて最長3ヵ月の投獄もあり得る、という厳しさです。
果たして「ながら運転」の解決策は厳罰化だけでしょうか?スウェーデンは比較的、高所得国の中で自動車事故死者数が少ないのですが、スマホ「ながら運転」を取り締まる法律はありません。その代わり、注意散漫運転のリスクについて国民の認識を高める取り組みに力を入れています。
このコラムの著者
ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。