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「魅惑の小宇宙」

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花のある生活 ─ flower in life ─ 第29回
魅惑の小宇宙

ハナナスとマルナスの2種の実を、右側は屈折させ左側は曲線にして対比効果を狙っています。ナスの実の疎密感がポイントです。
ハナナスとマルナスの2種の実を、右側は屈折させ左側は曲線にして対比効果を狙っています。ナスの実の疎密感がポイントです。

 こんにちは。いけばな講師のYoshimiです。暖かな風に乗って風景が鮮やかに色づいてきたように感じます。皆さまいかがお過ごしでしたか。

 いけばなのコラム、今月は実の付いた花材をテーマにしています。”実もの”は、花に負けない魅力を秘めています。水分をたっぷりと含んだ重量感や、ユニークな形、色、そして枝に付いている時のリズム感などを利用すれば、見る人の視線を強く惹きつけることのできるいけばなです。

 豆柿や野バラの実など軽量であれば扱いやすいかもしれませんが、カリンやザクロなど重たいものは花器ごとひっくり返らないように注意する必要があります。実が主役であれば、葉が付いている場合はなるべく切り落とし、効果的な量を残してあげた方がインパクトのある作品になります。また実を残す時も同様に考え、空間のどの位置にどういう形で何個ぐらい残すのかを、花器や枝の長さのバランスを考えながら切っていきます。

 1度切ってしまうと元に戻らないのでドキドキしますが、切らないことには、その風景は見えてこないので、ここはパチンと落とすことをお勧めいたします。もちろんご自身の心が痛むほどの切り方はしなくて良いかと思います。自然の命と人間の心はつながっていると思うので、花材と対話しながらいけばなを楽しんで頂けたらと思います。

 一歩踏み込んだアドバイスになりますが、枝がタメの効くもの(華道用語で曲げる意味)であれば、その枝の角度を変えることで、より印象的になってきます。自然から切り取られた枝や実に、新たな息吹を吹き込めるのは私たちの手によるものなので、魅力溢れる花材で自由に描くことのできる、自分だけの小宇宙をぜひ楽しんで頂きたいと思います。

このコラムの著者

Yoshimi

Yoshimi

いけばな講師。幼少期より草月流を学ぶ。シンガポールでの華道活動を経て、現在はシドニーでいけばな文化芸術の発展に務める。令和元年には世界遺産オペラ・ハウスで日本伝統芸能祭に出演。華道教室を主宰。オンラインレッスン開催中。
Web: 7elements.me

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