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【新年恒例特集】回顧と展望2019/為替(谷村昌彦)

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為替

三菱東京UFJ銀行
オセアニア総支配人兼シドニー支店長

谷村昌彦

プロフィル◎1989年4月三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。ストラクチャード・ファイナンス部、アジア投資銀行部(香港)、アジアCIB部(シンガポール)、欧州CIB部(ロンドン)、トランザクションバンキング部などを経て、2016年10月より現職。東京大学、ニューヨーク大学ビジネス・スクール卒業

豪ドルは横這い圏での値動き

2018年は前年同様、政治・経済・外交面において自国第一主義、孤立主義、反グローバリズムが席巻する年となった。米国はトランプ米大統領が打ち出す施策に翻弄されながらも景気拡大は継続、主要株価指数は史上最高値を更新した。FRBは3カ月毎の利上げを継続し政策金利は2%を突破、これらが米ドル高の原動力となった。

豪州の景気拡大は27年間に及び、足許も継続している。失業率は12年以来となる5.0%まで低下したが景気に過熱感はなく、インフレ指標も落ち着いている。これを受けRBAは現行金融政策を維持し様子見姿勢を貫いている。住宅市場はピーク・アウトしたものの、商品価格は底堅く推移するなど経済基盤は総じて安定している。このような状況下、豪ドルは米ドル高を背景に略一本調子で値を下げた。以下18年の豪ドル相場を振り返り、19年の相場を展望する。

18年の豪ドル相場は0.78台で取引を開始した。年初から米ドルがユーロ等対主要通貨で軟調に推移したため豪ドルは上昇、0.8大台を突破し15年5月以来となる0.81台半ばを記録した。しかし米国でインフレ懸念が台頭し、利上げペースが加速するとの見方が強まると米ドルは急反発、主要株価指数が大きく値を下げる中で豪ドルは下落に転じた。

米国の利上げを受けて、豪米政策金利や10年国債利回りが18年ぶりに逆転(米>豪)したことも地合いを悪化させ、年央には0.74前後まで売られた。その後、米中の貿易摩擦が激しさを増したこと、8月にはトルコ危機が勃発し同国の金融市場が大混乱となったことから、市場ではリスク回避傾向が強まり、豪ドルは16年2月以来となる0.70台前半まで下落した。

注目された11月米中間選挙はトランプ大統領率いる共和党が下院で敗れる結果となったものの、事前予想の範囲内であり限定的な反応に止まった。その後は年末ホリデー・シーズンを控えたポジション調整の動きから、0.73台に戻している(11月30日現在)。

対円相場は年初88円台で寄り付き、その後は豪ドルの下落トレンドを受けて上値の重い展開となった。10月には約2年振りに78円台半ばまで下落したが、その後は反発し82円台に値を戻している(11月30日現在)。

19年は米国の経済金融動向、及びその持続性が鍵となる。米政策金利は中立水準と目される3%に近づいており、利上げサイクルは終盤と見る。現時点で米景気の後退は想定し難いが減速は不可避であり、景気動向次第では予想以上に利上げ打ち止めが早まる可能性には留意したい。この場合、対主要通貨でドル高に歯止めが掛かることとなろう。

豪州経済は力強さには欠けるものの底堅さに変わりはない。財政・金融政策は双方とも景気拡大をサポートすると見るが、米中貿易摩擦、国内住宅市場動向は波乱材料であり注意を要する。なお19年は総選挙が実施されるが、豪政局が為替市場に及ぼす影響は限定的と見る。

豪ドルの対米ドル相場と米ドル・インデックスの連動性を見ると足許は過去5年で最も高い水準にある。これは為替市場において、国内景気動向よりも海外情勢が材料視されていることの証左である。19年も国内は巡航速度での景気拡大・金融政策は現状維持となる可能性が高く、この場合豪ドル相場に最も影響を及ぼすのは、引き続き米ドル動向であり海外情勢となろう。米利上げ打ち止めに伴うドル高終了は豪ドルの支援材料となるが、一方で米中貿易摩擦、安全保障の問題は米ドル支援材料となる可能性があり不透明感は強い。

マーケットではここ数年は下限0.7、上限0.8のレベルを強く意識した値動きが続いており、本年もここから大きく乖離する可能性は低いと見る。国内動向が材料視されるとすれば金融政策だ。賃金統計を見ると底入れから上昇に転じており、インフレ懸念が高まることとなれば、利上げ期待を通じて豪ドルをサポートすると見る。

対円相場は、日豪金利差に着目すれば豪ドル優位な状況は不変だが、日銀の金融政策正常化が注目される局面では円高が進行する可能性が高く、75円近辺を試す展開を予想する。(2018年11月30日脱稿)

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