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爬虫類の人工孵化

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第65回
爬(はちゅう)虫類の人工孵(ふ)化

明けましておめでとうございます。カランビン野生動物病院(Currumbin Wildlife Hospital)では、クリスマスもお正月も関係なく野生動物が保護され治療を受けています。2018年の1年間に当院で治療を受けた動物の数は1万1,082匹と、前年を1,000も上回る記録となりました。

毎年とても忙しいこの時期は、冬の終わりから春にかけて産み落とされた鳥類や爬虫類の卵が孵(かえ)る時期でもあります。病院には卵を一定の温度に保ち人工孵化させるための孵卵(ふらんき)器があります。住宅地の庭や道路脇で見つけられた卵や、伐採された木から巣ごと見つかった卵、そして入院中の動物が産んだ卵や、瀕死(ひんし)もしくは既に死んでしまった爬虫類から摘出された卵などを孵卵器に入れ、温度や湿度を管理します。

アゴヒゲトカゲの赤ちゃん
アゴヒゲトカゲの赤ちゃん
オーストラリアナガクビガメの赤ちゃん
オーストラリアナガクビガメの赤ちゃん

同院で人工孵化を試みるのは、爬虫類の卵のみ、主にウォータードラゴン、アゴヒゲトカゲ、淡水ガメ、ニシキヘビです。鳥の卵は1時間ごとに転卵と言って卵を回転させる作業が必要になるため、自動転卵機がない当院では人工孵化は難しく、孵卵器を所有する保護士に依頼することになります。また毒ヘビの卵は、卵から孵った際にスタッフやボランティアに危険が及ぶ可能性があるため、当院では人工孵化を行っていません。

昨年末、孵卵器で管理していたアゴヒゲトカゲの卵と、オーストラリアナガクビガメの卵が孵りました。朝、看護スタッフが孵卵器のチェックをしたところ、卵から孵った赤ちゃんトカゲたちが元気に動き回っていました。カメの赤ちゃんは刺激に反応はあるものの自分で動こうとはしていなかったため、しばらくタオルの上で様子を見て、動きが活発になってから水槽に移しました。

爬虫類は哺乳類や鳥類と違い、親が子どもの世話をするということがありません。卵から孵ってすぐに、自分で餌を探してその身を守っていかなければなりません。赤ちゃんたちを野生に放す時は、うれしくもあり不安でもあります。外では多くの危険が待ち受けているので、無事に成長できますように、と祈るばかりです。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっている他、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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