福島先生の人生日々勉強
深追いしない
人生は苦楽がセット。今はこちら側にいるだけ。そんな風に思える人は、表情まで自然と優しく、生き生きとしていて余裕があります。
生きていると楽しいこともあれば、苦しいこともあります。どちらかと言えば、苦しいことの方が頭に浮かびやすいので、苦しいばかりの人生に思えるかもしれません。しかも、何だか自分ばかりが苦しい思いをしているような気がします。
ですが、これは当たり前の感覚なのです。苦しみの方が思い出しやすいという脳の仕組みのせいで、他の人はいつもうまくいっているのに、自分は何とダメな人生を送っているのだろうと思い込んでしまうのです。
問題は、苦楽のどちらに対しても、深追いしてしまいがちなことにあります。物事を俯瞰(ふかん)すると良いと言いますが、まさしくその通りで、クールでいることが大事です。苦と楽を、自らの身と心で完全に受け止めて、どちらにも惑わされることがなくなる時、真実の自分でいられます。到底、自分にはそんなことはできないと思われるかもしれませんが、意識することで、近付いていくことができます。
苦の真っただ中にいる時、あるいは楽の真っただ中にいる時、私たちはつい、苦楽のもう一方が存在することを忘れてしまうことがあります。苦しい時は、苦しさばかりで頭がいっぱいになり、失敗が失敗を呼び込み、結果、苦が苦を連れてくるという悪循環に陥りがちです。楽しさに溺れ、人生の道を踏み外してしまうというようなこともあります。
苦も楽も、あまり深追いしないこと。苦も楽も、しょせんは人間の主観であり、時と共に流れ行くものです。ですから、苦にあれば苦を受け、楽にあれば楽を受ける、というような自然体でいること。おおらかな心のスタンスでいること。これが、苦楽を超えてさらりと生きる術なのです。
人間の知恵など、浅はかなものだと知っておき、苦でも楽でもそんなものだと受け入れて、満点になり得ない自分と他人の生き方に人間らしさを見出して謙虚に生きることです。そのさなかに、どれだけ多くの精神的財産を得て、人として深く大きくなれたかということが、個の成長なのではないでしょうか。
巡る季節と同じように、人生にはうれしい時もあれば、つらい時もあります。うれしい時は浮かれず、つらい時は明日を信じてくじけずに、1歩1歩、歩んで参りましょう。
歩むと言っても、前に進むことだけが進歩ではありません。時には後ずさり、時には立ち止まり、動かぬ心に勇気の1歩を見出すこともあります。それら全てが、人としての進歩なのです。
教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。33年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。