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旦那はオージー「ひな祭り」

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第52回
ひな祭り

【前回までのあらすじ】
極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。

日本には各種季節行事が毎月のようにあるが、外国人にとって興味深いのは「桃の節句」であろう。あのエキゾチックな雛(ひな)人形セットを見ると、外国人は驚きのあまり目を見張るようだ。

夫も例外ではなかった。しかし、結婚したばかりのころ、我が家には雛人形はなかった。なぜなら、私の実家には娘が3人いたため、実家の雛人形を持って嫁ぐことができなかったからだ。だが、捨てる神あれば拾う神あり。何と知人が「娘も嫁いで必要なくなったから、処分したい」と、7段飾りの雛人形を譲ってくれたのだ。

それ以来、ひな祭りの1~2週間前に飾って、節句が終わるとその日のうちに片付けるのが夫の仕事となった。「雛人形をいつまでも飾っておくと、お嫁に行くのが遅くなる」「毎年、雛人形を出さないとお嫁に行けない」と聞いたからかもしれないし、「生まれたばかりの可愛い娘が、お嫁に行けなくなったら可哀想だ」という親心だったのかもしれない。私が出張中で家にいなかった年でも、しっかりと片付けてあったのには感心した。

ところで、私が日本語を教えているオーストラリアの小中学校のクラスで桃の節句について説明する時は、お内裏様とお雛様だけを持って行ったり、ビデオを見て歴史について簡単に学習したりする。そして雛人形の値段の高さに、皆、とても驚く。

イラスト=たこり
イラスト=たこり (Web: takori.go-jin.com)

「雛人形を処分する時は、そのままゴミ箱に入れてはいけない。人形には魂がこもっているから、神社などに持って行き正式な形で供養をしてもらうのだよ」という授業をした後、折り紙でお雛様を作った時のことだ。

折り紙のお雛様も人形だと思ったのか、紙人形(※)と折り紙を混同したのか、「先生、これを作った後、ちゃんと供養しないと悪いことが起きちゃうの?」と心配そうに聞いてきたので、驚いたと共に、すごく可愛いらしいと思った次第だ。

※3月3日の節句の夕方、川や海に流し去る雛人形。また、その行事・風習。罪やけがれを移して形代を流したことに由来する。雛送り。雛流し。


ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中。
Web: ameblo.jp/kangaroo777
www.facebook.com/miffy777/
ameblo.jp/darwin-japanese

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