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第132回 窪野の八つ鹿踊り/書家れんのつきいち年中行事

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第132回 窪野の八つ鹿踊り

ご機嫌いかがですか、れんです。

先日ふと目にした記事を読んで愕然としてしまいました。それまで自分が疑いもせずにやって来たことを半ば否定する内容が書いてあったからです。親から言われて習慣となり、継続している事柄は各々あると思います。外から帰ったらうがいと手洗いをする、開けた戸は必ずきっちり閉めるなど、他にも無意識に行っていることがたくさんあるはずです。その記事には寝る時の体の向きについて書かれていました。右下寝と左下寝についてのメリット・デメリットの紹介もありましたが、何より仰向け寝を“理想”として展開していました。

私は子どものころ、横になる時は右側が下、と言われていたのでずっとそれを守ってきました。寝付きは良い方ですし、特に快適かどうかは分からないけれど、そんなものだと思っていました。しかし、その記事では右下寝は胃や腸の出口が右側にあることから消化器系への効果が期待できるとするものの、体全体への血液循環や熟睡に必要な要素が多い仰向け寝を推していたのです(ちなみに左下寝はリンパ液の分泌を良くする効果があり、老廃物や体内毒素の排出が期待できるそうです)。しばらく考えましたが、父が言ったのは食後に寝転がってテレビを見る時には右側を下にせよ、ということだったのかもしれません。律儀に守ってきたことであっても、改めて見直す必要があるかもしれないということですね。

さて愛媛県南西部に位置する西予(せいよ)市では、毎年4月の第3日曜日、山林生い茂る三滝神社の大祭で「窪野の八つ鹿踊り」が奉納されます。この鹿踊り、実は遠い宮城県と関わりがあります。

江戸時代の初期、初代仙台藩主は言わずと知れた伊達政宗で、その長男は名を秀宗と言いました。母が正室ではなかったので最終的に家督は継げず、家康から大坂冬の陣参戦の功として父に与えられた伊予国宇和島10万石を継いで初代藩主となります。その国入りの際に仙台地方の鹿踊り、雄鹿たちが雌鹿を訪ね探したあげく遂にそれを見つけた喜びの踊り「めじしかくし」を四国へ持って来たのです。実に400年に及ぶ歴史ある伝統芸能です(2005~08年は休止)。

踊り手は先音頭1人、庭入1人、雌鹿1人、子鹿4人、後音頭1人の計8人で、演者は全員成年男子です。頭上に乗せた鹿の頭部から下がった布で体を覆い、自ら胸に吊るした締太鼓を鹿笛に合わせて打ちながら円陣になって踊ります。仙台藩地方の鹿踊りに比べると町風な歌舞性の強いものになっていますが、素朴でどこか物悲しいような旋律と共に、8匹の鹿がゆったりと静かに舞います。

では、作品をご覧ください。行書の「八つ鹿踊り」です。ゆったりと伸びのある静かな動きを目指しました。毛筆を使って線を書く時、息を止めて運筆する人をかなりの割合で見受けます。しかし、それはお勧めできない方法です。線を引く時は息を吐くのです。真逆の行為ですが、力を開放するのに呼吸は非常に大切で、この時息は吐くのです。テニス・プレイヤーが球を打つ時に声を出しています。空手家の瓦割りでも気合の入った声を出します。つまり息を吐いているのです。書道も同じです。線を引く時は息を吐く、これはとても重要な要素なのです。

「つ」の起筆で1つドンと突いているのは元の漢字の名残りを表現しています。ちょっと想像がつかないかもしれませんが「川」の字です。その一画目の名残りなのです。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub

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