黄金色の砂浜が続くゴールドコーストは、オーストラリアの国技とも言えるサーフィンのメッカだ。暖かく過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、年間を通して老若男女がサーフィンを楽しんでいる。照り付ける太陽と透き通った海水、奇麗に割れる波などなかなか日本で体験することのできない環境ということもあり、多くの人がサーフィンに興味を示すが、いざ始めるとなると何から手を付ければ良いか分からないもの。今回はサーフィンを始めるに当たって、サーファーズ・パラダイスにある「サーフショップ・レトリック」で店長を務めるカズ(KAZ)氏の協力の下、初心者が知っておきたいサーフィンの基本情報を紹介していく。(文・写真=塩澤真奈美)
サーフボードの知識を深めよう
サーフィンを始める第1歩は、サーフボード(以下、ボード)の購入だ。ボードには各名称があり、それらを選ぶ際はもちろん、サーフィン上達のためにも知識を深めておく必要がある。以下に、ボードの専門用語をまとめてみた。
サーフボードの各名称
- ノーズ
ボードの先端。この部分の幅が広いほど波をつかみやすく、狭く鋭利であるほどターンなどのパフォーマンスがしやすい。
- ストリンガー
ボードの中心に入っている木製の補強材の1つ。ボードが折れるのを防ぐ重要な役割を担っている。
- レール
ボードの側面部分を指し、レールの厚みがターンのしやすさや、走り出したボードのスピードに影響を及ぼす。
- フィン
車でいうタイヤの役割を果たすフィン。小さいタイヤであれば小回りが利き、大きなタイヤになるとハンドリングが困難なように、フィンの大きさを変えることでターンの速さに違いが出る。
- テール
ボードの後端部分。さまざまな種類のテールがあるが、幅があるほど波のパワーを受ける面積が広いため、小さい波でもサーフィンを楽しむことができる。
- レングス
ボードの長さによって名称が変わる。一般的にレングスが長いほど、ボードの滑り出しが早くなる。
- スペック
各ボードのボトムには、その情報が記載されている。左から「レングス(長さ)×ワイズ(幅)×厚み」を指し、「L」はリッターと呼ばれボードの浮力を示す。
サーフボードの種類
レングス(長さ)によって名称が変わるボードは、それぞれに特徴がある。一般的にファンボードからサーフィンを始め、自分が思い描くスタイルに合わせて次に購入する板の長さを決めていく。ここでは一般的な3種類のボードの性質について解説する。
- ショートボード
長さが6.6フィート(約2メートル)未満のボードを指す。短く、コンパクトで軽量に作られていることから小回りに優れている。波の乗り方を理解した中級~上級者向け。
- ファンボード
ショートボードとロングボードの中間の長さのボード。主に6.6~9フィート(約2メートル70センチ)までの長さのボードを指す。ロングボードより小回りが利き、ショートボードより幅や浮力があり安定感を得られることから、初心者や女性に人気。
- ロングボード
長さが9フィート以上で、波のうねりによってテイクオフ(ボードの上に立つこと)ができるので、ゆったりとしたロング・ライディングやボードの上を歩くウォーキングのパフォーマンスを楽しむことができる。
フィンの種類
車でいうとタイヤの役割を果たすフィンにもさまざまな種類がある。好みのスタイルを見つけ、ボードを購入する時の判断材料にしよう。日本に持って帰ることを検討しているのであれば、フィンの取り外しが可能なボードの購入をお勧めしたい。
- シングル・フィン
サーフィンの起源はシングル・フィン。直進するための安定性に優れ、ゆったりとしたライディングができるが、コントロールが難しい。
- ツイン・フィン
サイド2本のフィンで小回り良くターンが可能。しかしセンター・フィンがないため、直進する安定性に劣る。
- トライ・フィン
3本のフィンは、シングルとツインの長所を併せ持ち、バランスが一番取りやすい最も主流のスタイル。初心者にはトライ・フィンがお薦め。
- クアッド・フィン
4本のフィンは早いブレイクの波に適している。波の抵抗を受ける範囲が多くなるため、3本のフィンよりも加速が掛かり、スピードを付けてのターンも切れ味が良い。
- ファイブ・フィン
トライ・フィン及びクアッド・フィンを、波のコンディションに応じてフレキシブルに変更できるように5本のフィン・カップを持つ。
サーフィン・ギア・グッズ
サーフボード以外のサーフィンを楽しむための必需品や、持っていると便利なグッズを紹介。全て一度そろえてしまえば、消耗が少ない物ばかりなので、始めたタイミングで買いそろえて快適なサーフィン・ライフを過ごそう。
海上がりにサッと着れて外での着替えに便利。これまではタオル地の商品が主流だったが、最近では吸汗速乾機能を持つフリース地が人気。ポンチョだけで海から家に帰るサーファーも。
車のタイヤに鍵を隠したり、海まで鍵を持っていくサーファーもいるが、車上荒らしや紛失の危険がつきもの。車の鍵を入れておく暗証番号付きの南京錠型ケースがあれば、安心してサーフィンを楽しめる。
オーストラリアの強い紫外線の下、日焼け止めなしで長時間のサーフィンをすると、やけどの危険性大。必ず海に入る前には日焼け止めを塗ろう。各メーカーが発売している、手が汚れにくいスティック・タイプの日焼け止めがお薦め。
ボードのデッキに塗る滑り止め。海水の温度によって使用するワックスの種類が異なる。デッキに塗ったワックスには汚れが付きやすく、定期的に塗り替えが必要なためリムーバー商品も手に入れておきたい。
ボードと体をつなぐ、いわば命綱の役割を担うリーシュコード。安価な物は海の中でコードが絡まりやすく、サーフィン中のストレスにもなるので、購入時にはショップ・スタッフに性能の確認をしよう。
サーフィン練習用のスケートボード。通常のスケートボードより前輪が動き、サーフィンのライディングに近い乗り心地。波のサイズがなくサーフィンができない日でも、スケートボードで陸上トレーニング(以下、陸トレ)ができる。
サーフ・ショップ店長に聞いた!
初心者サーファーへのアドバイス
初心者が知りたいであろうサーフィンを始める際の疑問を、カズ氏に解説してもらった。
初心者には長さがあり、浮力のあるボードがお薦めです。ボードが長ければ長いほど、滑り出しが早く浮力と比例して安定感が出てスムーズにテイクオフできるので波乗りを楽しめると共に、より早い上達にもつながります。
サーフィンの上達には、波に乗れた回数がものを言います。そのため、最初のボード選びは非常に大切です。更にゴールドコーストと日本の波質は異なり、ゴールドコースト滞在中にのみ使用するボードなのか、日本に持ち帰ってサーフィンを続けるのかによっても選ぶボードが変わってきます。
インターネットで中古品を購入した人から、「買ったら壊れていた」「全然乗りこなせない」という声をよく聞きます。価格やデザインで決めずに、サーフ・ショップのスタッフにアドバイスを聞くことが一番です。サーフィンは専門用語が多いので、日本人スタッフのいるショップで的確な情報を得ると良いでしょう。例えば、デザインを重視する人であれば比較的長さが短くても乗りやすいボードをお薦めできるので、自分が思い描くサーフィン・スタイルの要望をスタッフに相談してみてください。きっと満足のいく1本を手に入れられるはずです。
ボードの購入前にレンタルし、自己流で練習するのも1つの手ですが、自分のボードを購入しそれに慣れていくことが、結果的にボード・レンタル費や効率を考えると一番の上達の近道だと思います。もし本気でサーフィンを始めるのであれば、思い切ってボードを購入しましょう!
もし既にサーフィン用品を買いそろえているのであれば、天気の良い1~2フィート(ひざから腰くらいの高さ)サイズの波のコンディションに合わせて海に通いましょう。まずはサーフィンの上達を意識せずに、ゴールドコーストの広大な自然、透き通る海水、波に乗る楽しさを知ることが先決です。ある程度波に乗る感覚をつかみ、自分の課題が見つかったら、ボードを購入したサーフ・ショップへ相談に行くのがベストです。スタッフはボードの性質を熟知しているので、課題に対してベストな解決法を教えてくれると思います。
サーフィンの基本ルールを学ぶためにスクールを受講するのもお勧めです。泳ぎを知らずに大海に投げ出されて溺れるのと同様に、まず日本よりパワーのある波について知ることが、波乗り上達の近道の1つです。講師が波に乗るタイミングから目線や姿勢などをアドバイスしてくれます。スクールの申し込みなどは、サーフ・ショップに問い合わせてみてください。
また、どうしても波がなく、サーフィンができない日は陸トレを行いましょう。サーフィンには腹筋が必要不可欠です。特に女性は腹筋を鍛えてくださいね!更に、YouTubeなどで参考になるサーフィン用の陸トレの動画がアップされているので、探して実践してみてください。
その他に、サーフィン練習用のスケートボードでのトレーニングも効果的です。波に乗った感覚を陸上で味わえるので、波乗り時の視線や体重移動の上達に非常に有効です。中でも「Carver Skateboards」というスケートボード・ブランドがお薦めです。
サーフィンのルールを破らないこと!それが大事です。特に、前乗り(既に誰かが乗っている波に乗ること)のルールを破ると、サーファー同士の接触やボードが損傷するなどの大事故につながりかねません。もしルールを破ってしまったら、相手にすぐ謝りましょう。
あとは、無理をしないこと。ハードなコンディションの日に挑戦し、けがをしてしまった話はよく聞きます。波のコンディションをチェックできる波情報サイト(COASTALWATCH: www.coastalwatch.com/surf-cams-surf-reports/qld)などで確認して、楽しんでサーフィンをしてください。