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セイガイインコ麻痺(まひ)症

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第68回
セイガイインコ麻痺(まひ)症

カランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリの目玉と言っても過言ではない、レインボー・ロリキート(ゴシキセイガイインコ)の餌付け。その名前の通り、虹のように鮮やかな羽を翻し、群れを成して空を飛ぶ姿はとても美しいものです。ロリキートは、カランビン野生動物病院(Currumbin Wildlife Hospital)で治療を受ける動物の中で一番多く保護される種で、例年2,000羽ほどが保護されています。今年は、1月から3月までの3カ月間で既に750羽が治療を受けるという異常事態となっています。一体何が起こっているのでしょうか。

衝突事故などでけがを負った鳥も保護されていますが、けがを負った形跡が全くないのに飛べなかったり動けなくなっている鳥がほとんどです。主な症状は、ふらついたり立てなくなる下肢麻痺、まぶたが麻痺してまばたきができない、舌やのどの麻痺で物を飲み込めないなどです。ロリキートだけでなく、小型で緑と黄色の羽を持つ「コセイガイインコ(Scaly breasted Lorikeet)」にも同じ症状が見られます。

保護されたレインボー・ロリキート
保護されたレインボー・ロリキート

こうした症状をまとめて「Lorikeet Paralysis Syndrome(セイガイインコ麻痺症)」と総称し、10年以上も原因究明のための努力が続いていますが、いまだに解明されていません。

何らかの中毒と考えられていますが、これまでの研究で鉛など重金属、有機リン化合物などの殺虫剤、ボツリヌス菌は原因ではないとされました。

ロリキートが餌とする花の蜜や花粉が原因である可能性が高いとされていますが、胃の内容物から花粉を調べても、個体によるばらつきが多く、原因の特定には至っていません。

症状が軽い場合は、数日間ケージで休息させるだけで済みますが、舌や足に麻痺がある場合、チューブでの差し餌や四肢のストレッチなどを行う必要があり、回復まで数カ月掛かることもあります。悪化して呼吸不全に陥ることもあるので、早期の治療が重要です。

もし近付いても飛ぼうとしないロリキートを見つけたら、できるだけ早く保護して動物病院に連れて行ってください。鋭い爪とくちばしを持っているので、厚手のタオルで包んで箱に入れると保護する側も安全です。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっている他、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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