オーストラリアで夢のマイホーム計画
第130回 ネガティブ・ギアリングが廃止される?
5月18日に国政選挙が行われますが、私たち不動産業界にとっては、その結果が非常に気になるところです。現政権の与党・自由党と、野党・労働党との政策の違いはさまざまですが、この2大政党の今回の選挙での大きな政策の違いは「ネガティブ・ギアリング政策」です。
もし労働党が勝利すると、2020年1月1日以降に購入する物件に対して、中古物件であればネガティブ・ギアリングの利用が廃止されます。
そもそもネガティブ・ギアリングとよく耳にするのですが、どういった意味なのでしょうか。不動産投資物件に関して、掛かる経費(住宅ローンの利息、カウンシル費用、ストラータ管理費用、修繕費、その他)を個人の所得からマイナスすることができ、課税対象所得を減額できるというものです。
所得に関する税金が比較的高いオーストラリアでは、投資家たちの節税対策としてネガティブ・ギアリングは非常に魅力的なシステムと言えました。しかし、オーストラリアの不動産物件価格が高騰する理由の1つとして、このネガティブ・ギアリングのシステムが挙げられてきました。
与党・自由党は、労働党のネガティブ・ギアリング廃止の政策が実施されれば、現在、既に弱くなり始めている不動産マーケットに大きな悪影響を及ぼし、その結果、家賃が上昇、低所得層のオーストラリア人の生活を脅かすことになると警鐘を鳴らしています。1985年に労働党が一時的にネガティブ・ギアリング政策を廃止した際に、当時の投資家たちは、損失分を相殺するために家賃を上昇させたと言われています。
ただ専門家の多くは、ネガティブ・ギアリングの廃止だけが、家賃上昇の要因になるとは思っていないようです。更に、この政策の目的はファースト・ホーム・バイヤーが、マイホームを購入しやすくするためだと言われます。一方で、中古物件にネガティブ・ギアリングが利用できなくなれば、若いオーストラリア人が中古物件マーケットには入ることができないという指摘もされています。
供給過多気味の新築物件の数や、ここ数年、問題視されるインタレスト・オンリー・ローンの切り替え時期、厳しい銀行融資条件など、不透明材料が多いオーストラリアの不動産状況――。新しい政策が施行されると、どういった影響を及ぼすのか。分かっていることは、急を要する理由がない限り、売り手も買い手もしばらくは待ちの姿勢が続くということだけです。
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住宅ローン・コンサルタント(MFAA正式会員)
Yon