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2019年6月 ニュース/総合

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5月18日夜、シドニーのウェントワース・ホテルで勝利宣言を行うスコット・モリソン首相(Photo: AFP)
5月18日夜、シドニーのウェントワース・ホテルで勝利宣言を行うスコット・モリソン首相(Photo: AFP)

与党保守連合が勝利

下院で単独過半数—連邦選挙

連邦選挙の投票が5月18日、全豪で行われ、開票の結果、経済・財政運営の実績を訴えた中道右派の与党保守連合(自由党、国民党)が勝利した。保守連合政権としては2013年の前々回選挙以来3期目の続投を果たした。昨年8月に就任したスコット・モリソン首相(自由党党首)は、初の選挙で国民の信任を受けた。支持率が低迷する中、背水の陣で選挙戦に臨んだが、事前の世論調査や大方の予想に反して議席を伸ばした。

一方、気候変動対策の強化や福祉の充実を訴えた中道左派の最大野党・労働党は、6年ぶりの政権交代を逃した。保守系の小政党が得票率を大幅に伸ばした北東部QLD州で2議席を減らすと共に、労働党の地盤である南東部VIC州でも議席を伸ばせなかった。「労働党はカネ(財政)を管理できない」と攻撃した与党のネガティブ・キャンペーンも響いた。

選挙は下院(定数151=任期3年)の全議席と上院(定数76=任期6年)の40議席を改選した。このうち下院では、公共放送ABCによると21日午後までに与党は76議席の当選が確定し、単独過半数を制した。

27日午後の時点(開票率84%)で、ABCの予想によると最終的な議席数は、与党が改選前と比べて4増の78、労働党が2減の67、その他が1減の6となる見通し。改選後の連邦下院の各党の予想議席数は表の通り。ただ、2議席の当選が依然として確定しておらず、最終的な結果は変動する可能性がある。

勝利は「奇跡」とモリソン首相

モリソン首相は18日夜、シドニー市内のホテルで支持者を前に演説した。首相は「私はいつもミラクル(奇跡)を信じてきた」と述べて逆風下の勝利を強調。地元メディアも与党勝利を「サプライズ」と伝えた。

この直前に労働党のビル・ショーテン党首は、慣例通り首相に電話をかけ、祝意を伝えていた。この時点ではまだ与党の過半数確保は微妙な情勢だったが、政権交代の可能性は消えていた。

首相は26日、新内閣の閣僚人事を発表した。マイケル・マコーマック副首相兼インフラ・交通・地域開発相(国民党)、ジョシュ・フライデンバーグ財務相、マリース・ペイン外相、ピーター・ダットン内相らの主要閣僚は留任させ、小幅な人事変更にとどめた。これまでで最多とされる7人の女性閣僚を起用したほか、先住民出身者としては史上初の閣僚となるケン・ワイアット氏を先住民相に抜擢した。新閣僚の顔ぶれ(閣内相)は下の表の通り。

改選後の連邦下院各党の勢力

政党議席数*1増減
保守連合自由党45784
QLD州自由国民党*223
国民党10
労働党67-2
その他グリーンズ16-1
センター・アライアンス1
カッターのオーストラリア党1
無所属3
合計1511

出典:豪連邦選挙管理委員会、ABC放送
*1 区割り見直しにより定数は今回の選挙から1議席増加
*2 自由党と国民党が2008年にQLD州で合併

新労働党党首にアルバニージー氏

首相の勝利演説に先立ち、ショーテン労働党党首はメルボルンで敗北宣言を行った。ショーテン氏は「労働運動は次のリーダーの下で政権奪回を目指す」と述べ、悔しさをにじませながら党首辞任を表明した。

ショーテン氏は同党の支持母体である労組のトップを経て2007年に政界入り。13年の選挙で政権を降りた労働党のホープとして野党党首に就任したが、国民的な人気には恵まれなかった。今回、「勝てた選挙」を落としたことで、首相への道を絶たれた。

後継をめぐっては、女性のタニヤ・ピルバーセック副党首や、「影の内閣」で財務担当を務めるクリス・ボウエン氏らの有力候補が次々と党首選への出馬を辞退した。このため、党首選に唯一立候補を表明していた党内実力者のアンソニー・アルバニージー氏が新党首に選出されることが27日、確定した。アルバニージー氏は1963年シドニー生まれ。96年の連邦選挙で初当選、前労働党政権で交通相や副首相を歴任した。


気候変動対策を全面に訴えた無所属候補に破れ、議席を失ったトニー・アボット元首相
気候変動対策を全面に訴えた無所属候補に破れ、議席を失ったトニー・アボット元首相

保守の小政党が得票伸ばす
与党を利する結果に—連邦選挙

景気の減速感が強まる中で、有権者は環境保護よりも目の前の経済を優先した――。今回の選挙結果をこう捉えることもできる。ただ、地域別に各政党の得票の傾向を見ると、必ずしも与党サイドに強い追い風が吹いたわけではない。

ABC放送(27日午後の時点)によると、下院の各党の得票率は表の通り。保守連合は議席を増やしたものの、支持動向の目安となる「スウィング」(前回選挙と比較した得票率の増減率)はマイナス0.3%と縮小している。労働党もマイナス1.2%と後退。2大政党と左派の環境保護政党「グリーンズ」の3勢力は、いずれも前回選挙比で得票率を減らした。

一方、実業家で元上院議員のクライブ・パーマー氏が昨年、再結成した保守系の新政党「統一オーストラリア党」(UAP)は、豊富な資金力をバックに派手な選挙運動を展開。下院で1議席も獲得できなかったにもかかわらず、得票率3.4%を獲得した。保守強硬派の「ワン・ネーション党」も下院で議席ゼロに終わったが、プラス1.7%と得票率を伸ばした。

保守連合が得票率を小幅に減らしたにもかかわらず議席を増やすことができたのは、豪州の特殊な投票制度「優先順位付連記投票制」によるところが大きい。投票用紙の全候補者に優先順位を付けるこのシステムでは、下位候補の得票が2大政党に再配分されやすい。このため、いずれも保守系のUAPとワン・ネーション党の得票が保守連合に流れた。

都市と農村の分断が鮮明に

こうした傾向は、QLD州でより鮮明だった。同州ではワン・ネーション党とUAPが大幅に得票を伸ばし、恩恵を受けた保守連合は同州で労働党から2議席を奪った。労働党はQLD州で2議席を減らした上に、勝敗のカギを握ると見られた地盤のVIC州で1議席も伸ばせず、改選前の議席数をかろうじて維持した。これが労働党の直接的な敗因となった格好だ。

QLD州では、インドの財閥アダニによる炭鉱開発が自然破壊につながるとして大規模な反対運動が起こる一方、気候変動対策による石炭開発の停止や開発規制は雇用を奪うとの反発が出ていた。既存勢力に代わる保守政党は、環境保護より雇用や生活の安定を求める農村部の保守層の受け皿となった。

一方、シドニーやメルボルンの大都市圏では、気候変動対策への関心が高まっている。富裕層が多いシドニー北東郊外ワリンガ選挙区では、気候変動対策を訴えた新人の無所属候補が、自由党の大物議員であるトニー・アボット元首相を破った。リベラル色の強いメルボルン選挙区では、急進的な環境保護政策を掲げるグリーンズが得票率を3.6%伸ばし、大差で下院の1議席を維持した。

労働党は「気候変動に対して実効性のある行動を」(ショーテン氏)と訴えたが、農村部の有権者に代替の経済政策を示せなかった。今回の選挙結果は、環境問題に敏感な都市部のエリート層と、経済発展に取り残された農村部という豪州社会の分断も映し出している。

保守の小政党2党は得票を大幅に伸ばした

連邦下院の得票率*1−−全国
政党得票率スウィング*2
保守連合41.8▲0.3
労働党33.5▲1.2
グリーンズ10.0▲0.3
統一オーストラリア党3.43.4
ワン・ネーション党3.01.8
その他8.3▲2.3
連邦下院の得票率−−QLD州
政党得票率スウィング
保守連合44.00.8
労働党27.0▲4.0
グリーンズ9.91.1
ワン・ネーション党8.83.2
統一オーストラリア党3.53.5
その他6.9▲3.3

出典:ABC放送
単位:% ▲はマイナス
*1 一次選好票ベース
*2 前回2016年選挙と比較した得票率の増減率

モリソン改造内閣(閣内相)の顔ぶれ

首相、公共サービス相スコット・モリソン
副首相、インフラ・交通・地域開発相マイケル・マコーマック
財務相ジョシュ・フライデンバーグ
歳出相マシアス・コーマン
農相ブリジット・マッケンジー*
外相、女性相マリス・ペイン*
貿易・観光・投資相サイモン・バーミンガム
法相、労使関係相クリスチャン・ポーター
保健相グレッグ・ハント
内相ピーター・ダットン
通信・サイバー安全・芸術相ポール・フレッチャー
教育相ダン・ティーハン
雇用・技能・小企業相ミカエラ・キャッシュ*
産業・科学・技術相カレン・アンドリュース*
資源・豪北部担当相マシュー・カナバン
エネルギー・温室効果ガス排出削減相アンガス・テイラー
環境相スーザン・レイ*
国防相リンダ・レイノルズ*
家族・社会サービス相アン・ラストン*
全国障がい者保険担当相、行政サービス担当相スチュアート・ロバート
先住民相ケン・ワイアット
水資源・干ばつ・地方財政・自然災害・緊急事態対応担当相デービッド・リトルプラウド
人口・都市開発相アラン・タッジ

敬称略、*は女性


晩年(2012年)のボブ・ホーク氏
晩年(2012年)のボブ・ホーク氏

ホーク元首相が死去

豪経済発展に道筋—自由化など改革推進

圧倒的な国民的人気を背景に、痛みを伴う経済改革を推し進め、今日の豪州の繁栄に道筋を付けたボブ・ホーク元首相が5月16日、死去した。89歳だった。

1929年SA州生まれ。西オーストラリア大、英オックスフォード大卒。69年~80年に労働党の支持母体である労組の全国組織、豪労働組合評議会(ACTU)書記長を務めた。80年の連邦選挙で初当選してから約2年半後の83年3月、野党党首として労働党を勝利に導き、第23代連邦首相に就任した。

インテリが多い現在の労働党指導者と違い、公の場でビールを一気飲みするなどオージーらしい陽気な庶民性がカリスマ的人気を集めた。社会政策では、国民皆保険制度「メディケア」を導入、「物価と賃金に関する協定」(アコード)を締結させ、労使の協調路線を敷いた。経済政策では、関税引き下げによる貿易自由化、金融業界の規制緩和、豪ドルの変動相場制導入、国有企業の民営化、産業の規制緩和など、反発の強かった改革を推進した。

外交では、旧宗主国の英国など欧州との経済的関係が相対的に希薄化する中で、アジアの経済成長を取り込む「脱王入亜」を進めた。日本政府と連携してアジア太平洋経済協力会議(APEC)の創設を主導した。

91年に右腕だったポール・キーティング蔵相(当時)との確執が表面化した。同年12月、キーティング氏と争った2度目の党首選挙で敗北。首相の座から引きずり降ろされ、翌92年に政界を引退した。8年の在任期間は労働党首相としては最長で、豪首相としても3番目に長い記録となっている。

豪州経済は、ホーク氏が首相を辞めた91年以来27年間にわたり、景気後退(2四半期連続のマイナス成長)を回避し、主要先進国で最長とされる景気拡大期を続けている。80年代の豪州は高いインフレや頻発する労働争議、低い労働生産性に悩まされてきたが、ホーク氏の一連の改革がその後の経済成長に寄与したことは間違いなさそうだ。

引退後も歴代の労働党指導者を支えたが、18日投票の連邦選挙に向けて5日に開かれた党集会にホーク氏の姿はなかった。ホーク氏がシドニー北郊の自宅で、妻と3人の子供に看取られながら亡くなったのは、投票日の2日前だった。


豪準備銀のフィリップ・ロウ総裁
豪準備銀のフィリップ・ロウ総裁

6月に3年ぶり利下げか

中銀総裁が言及

中央銀行の豪準備銀(RBA)が6月4日の金融政策会合で、減速感が強まっている景気を下支えするため、利下げに踏み切る可能性がにわかに高まっている。

RBAのフィリップ・ロウ総裁は5月21日、ブリスベンで行った講演で、労働市場に改善が見られず、失業率が5%前後で高止まりした場合に「物価上昇率は目標(2~3%)を下回る公算が高く、政策金利の引き下げは妥当となるだろう」と述べ、次の金融政策会合で金利の変更を検討すると明言した。

RBAは2016年8月に政策金利を現行制度下で最低の1.5%に引き下げて以来、3年近く据え置いている。豪州経済は昨年下期以降、成長率が一段と減速。豪統計局が16日に発表した4月の雇用統計では、失業率(季節調整値)は5.2%と前月比で0.1ポイント上昇した。1~3月期の消費者物価指数(CPI=季節調整済)は前年同期比1.3%と引き続き目標を下回った。

年内の利下げは既定路線となっていたが、ロウ総裁の発言で一段と現実味を帯びてきた。ロイター通信の調査によると、RBAは6月に政策金利を0.25ポイント引き下げて1.25%とするとの見方が有力だ。


グリフィス氏に旭日双光章
NSW州カウラの日本庭園理事長――対日理解の促進に寄与

令和元年春の外国人叙勲が5月21日、発表され、オーストラリアからはNSW州中部のカウラ日本庭園文化センター財団理事長のロバート・ジョン・グリフィス氏(70歳)が旭日双光章を受勲した。グリフィス氏は、オーストラリアにおける日本文化の紹介および対日理解の促進に寄与した。

捕虜収容所があったカウラでは第2次世界大戦中の1944年8月、日本兵捕虜が大量脱走を図り、交戦で日本兵231人、豪州兵4人が死亡した。戦後、地元住民と日豪の協力によって戦没者墓地や日本庭園などが整備され、日豪の和解と友好を象徴する町となった。

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