オーストラリアで夢のマイホーム計画
第131回 選挙結果と不動産業界の行方
5月18日に行われた国政選挙は、「労働党が政権を奪取するのでは」という多くの予想に反し、保守連合が勝利、政権を維持するという結果に終わりました。選挙ウィーク明けのオーストラリアの株式市場では軒並みポジティブな結果が表れ、特に4大銀行の株価は6%以上の上昇となりました。
仮にビル・ショーテンが率いる労働党が政権交代を成功させていれば、大幅な税制改革が断行される予定でした。大きな変更を望まない企業にとっては、安定した政策が必要不可欠です。知人が働く大手銀行では、政策の変更に対応するために、毎年数十ミリオン・ドルの予算が計上されると言います。
今回労働党が政権を握っていれば、ネガティブ・ギアリング制度が廃止される予定だったこともあり、不動産関連のジャーナルは、廃止されないことにより、今後落ち込んだ不動産業界は底辺を脱出すると口をそろえます。
シドニーやメルボルンの不動産価格は、ピーク時から比べて15~25%も下がったと言われており、オークションのクリアランス・レートも5割程度と冷え込んでいた不動産業界。労働党が勝利するという予測が今の状況に拍車を掛けていたとも言われています。
それでは、この選挙結果を受けて不動産業界はまた活発化するのでしょうか。業界のジャーナルが指摘するように、今の冷え込みはネガティブ・ギアリングの廃止など、労働党の政策に対する反応も一部あるでしょう。しかし現状の銀行の、特に投資家に対する厳しい規制が大きな要因の1つとも言えます。これが緩和されないことには、すぐに回復するとは言い難いでしょう。また銀行規制の緩和がまだ見えないなか、インタレスト・オンリー・ローンを利用していた多くの人びとの切り替え時期を考えると、リファイナンスできないケースも増えてきているという不安も残ります。
明るいニュースと言えば、選挙活動の終盤にスコット・モリソン首相が、「ファースト・ホームローン・デポジット・スキーム」というファースト・ホーム・バイヤー向けのプランを発表したことです。ファースト・ホーム・バイヤーが、5%だけの頭金で保険を支払わずに物件購入ができるというものです。詳細はまだ発表されていませんが、実施されるとなるとマイホームを諦めていた多くのファースト・ホーム・バイヤーが、マーケットに戻って来る可能性が高まりそうです。
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住宅ローン・コンサルタント(MFAA正式会員)
Yon