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第134回 チャグチャグ馬コ/書家れんのつきいち年中行事

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第134回 チャグチャグ馬コ

ご機嫌いかがですか、れんです。

早いもので日本が令和の世となってもう1カ月が経ちました。個人的にはもう何もかもすっかり令和なのですが、国内の実務的な面では平成からの切替作業にしばらく時間が掛かるのでしょうね。

実は令和に改元するに当たって大変光栄なお仕事を頂いていました。5月初めの3日間、在シドニー日本国総領事館に開設された新天皇即位のお祝いの記帳に出向いた人もおられたと思いますが、そこに展示されていた令和の書は私が書かせて頂いた物でした(その後の総領事公邸でのご即位祝賀レセプションでも展示)。このご用命を受けた時は感激で言葉に詰まるほどでした。将来天皇陛下のお名前にもなる二文字を公式に揮毫するその重大さと光栄さに背筋の伸びる思いでした。揮毫はもちろん作品の裏打ち作業から額入れまでとても緊張する作業でしたが、新しい天皇皇后両陛下へのお祝いと新元号の未来を祈念して心を込めて行いました。4月1日の元号発表の日に菅官房長官の掲げた書を揮毫された先生もさぞかし大変な思いだったろうと心中を推察できた次第です。

さて毎年6月の第2土曜日、岩手県の滝沢市と盛岡市との間で「チャグチャグ馬コ(うまっこ)」という農耕馬への感謝の祭りが開催されます。

滝沢市にある鬼(おにこしそうぜん)越蒼前神社(別名:駒形神社)から盛岡市の盛岡八幡宮までのおよそ13キロを、100頭ほどの馬に小荷駄(こにだ)装束を纏(まと)わせて、鈴と鳴輪(なりわ)の音を響かせながら行進するのです。チャグチャグとはその音のこと。小荷駄装束は参勤交代で荷物を運んだ馬部隊に由来します。鳴輪はドーナツ型の金属で山を歩く時の熊や狼除けだったそうです。色鮮やかに着飾った馬たちが鳥追笠(とりおいがさ)を被った子どもたちを背に乗せて鈴の音と共に練り歩く様は環境庁の「残したい日本の音風景百選」の1つでもあります。

東北は古くから日本有数の良馬の産地で、中でも岩手県のある南部地方は「南部駒(こま)」と呼ばれる優良馬の産地として有名でした。戦国の世では軍馬として、太平の世になると農耕馬として、馬は地元の人びとと切っても切れない深いつながりを持っていました。「南部曲がり屋」と呼ばれる人と馬が1つ屋根の下で暮らすこの地方特有の家屋がそのつながりを物語っています。馬を大事にするこの気持ちから馬の神様への信仰心が自然に生まれたのだとされています。

鬼越蒼前神社には農業神で馬の守り神である蒼前様がまつられています。そして普段の農耕で酷使されている馬たちの安全を祈願するための農民たちの蒼前詣(もうで)がこのチャグチャグ馬コの起源と言われています。江戸時代初期に始まったと考えられており、維新後一時衰退したものの明治20年代には日清・日露の戦争による軍馬の需要に合わせて復活。その後も大戦中に一度中止されましたが再度復活。2001年から現在の日程で開催されています。

では、作品をご覧ください。行書の「チャグチャグ馬コ」になります。直線的な漢字とカタカナだと緊張感が高くて全体が硬くなってしまいそうなので、鈴の音の作り出す和やかな雰囲気を出すために行書の曲線的な要素を加えてみました。

漢字・ひらがな混じりの文言や文章はよく目にすると思いますが、漢字・カタカナ混じりのものは珍しいのではないでしょうか。現在カタカナは外来語に使われる方が多いですし、漢字と合わせて使う場面をあまり見掛けません。ただ昔は漢文訓読の際の添え仮名として平安時代にはもう使われていました。漢字とカタカナだけの表記はそれほど昔からあるのです。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.amebaownd.com / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub / インスタグラム: instagram.com/renyano

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