福島先生の人生日々勉強
人は自分で強くなる
幼子は、過去を悔んだり、未来を思い煩(わずら)ったりしないので、雑念を持ちません。わがままや執着心も、悩み苦しんだりする原因にはなりません。苦悩とは、大人になるにつれ、自らはまっていく呪縛です。もしも大人でありながら幼子のように純粋に平和と光に満ちた世界に生きている人がいるとしたら、その人は既に心に迷いがなく理想の境地に到達しているのでしょう。私たち凡人は、悔やみもし、悩みもします。
生きるのに当面必要でないことを自分の意思で覚えていられるのは人間の特性です。その記憶力と思考力のお陰で、私たちは文明社会を築いて生活しています。自らの能力を駆使して自らの意思で外界に働き掛け、それぞれの目的に合うように周りを変え、自分を変え、進化してきました。意思こそが、人間を人間たらしめていると言えるでしょう。
しかし、そのようなすばらしい力も裏目に出てしまうと、気持ちが萎えてしまったり、大切なことをいつの間にか忘れてしまったりということにもなります。そのことが人を不幸に陥れることもあります。しかし一方で、忘れることができる故に、間違えたりつまずいたりしてもいつか立ち直ることができるのです。
失敗をしても諦めない。そこから学ぶ。成功しても驕(おご)らない。更に前に進むにはどうすれば良いかを考える。目標や課題はさまざまでしょう。仕事、家庭、勉強、スポーツ、ダイエットに節酒、節煙、禁酒、禁煙。どのような目標であれ、スムーズに達成するということは少ないと思います。大概は挫折を味わいます。
でも、そこで挫けない。ゼロからでもやり直す。同じやり方でダメなら違う方法を考えてみる。根性論ではありません。工夫して楽しくできる道を探しても良いのです。目標が大きすぎるなら、第一目標、第二目標とレベル設定をしてみましょう。どうにかして、何とかして前へ進むのです。簡単に諦めない。
目的を持ち、自らの意思で努力し続けることができるというのは、人間の持っているすばらしい特性です。大切なことにちゃんと気づきつつも、余計なことは気にしないで生きようとしていれば、挫折してもまた前を向くことができるのが人間です。
誰もが弱い心を持っています。弱さを受け入れてしまえば、逞(たくま)しくなるチャンスに恵まれます。失敗して傷ついても、そこから立ち直ろうとする時、人は強くなれるのです。
誰の人生にもアップダウンがあるものです。他人が自分より幸せに見えたとしても、それは幻のようなもの。苦悩は誰もが抱える共通項です。羨(ねた)むより進むことを選びましょう。
教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。33年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。