医療
Q
目に不快感があり、涙目が気になるので、眼科へ行くと眼瞼炎(がんけんえん)と診断されました。これは、深刻な目の病気なのでしょうか。(50歳男性=会社員)
A
眼瞼の辺縁の炎症を眼瞼炎と言います。急性のものは2週間ほどで自然に治まりますが、ほとんどの場合、慢性の疾患です。再発しやすく、治りにくい病気です。眼の不快感を感じたり、外見面が気になるかもしれませんが、通常、角膜が傷付いたり、視力に影響することはほとんどありません。
原因
湿疹や脂漏性(しろうせい)皮膚炎の人は、比較的なりやすいようです。前方眼瞼炎(Anterior Blepharitis)では、まつげの毛穴にブドウ球菌が繁殖して起こったり、脂漏性皮炎によるフケが原因となることがあります。
後方眼瞼炎では、マイボーム腺(Meibomian Gland=脂質のバリアを作る腺)が詰まってバクテリア感染し、炎症が起きます。これによって、作られる涙の組成が変わり、眼を潤して、すっきりとリフレッシュさせる効果が低下します。ウイルス感染やアレルギー反応で、起こることがあります。
まつ毛の毛穴に感染症が起き、痛いできものができることを、ものもらい(Stye)と言います。マイボーム腺が化膿して腫れる状態を霰粒腫(さんりゅうしゅ)(Chalazion)と言います。
症状
眼瞼炎の主な症状には、以下のようなものが挙げられます。
- 涙目、赤目、かゆみ
- 目の違和感、違物感
- まぶたがくっ付く感じ
- まぶたの縁に付く痂かひ皮
- 頻繁なまばたき
- 光に過敏になる
- まつ毛の異常な生え方、抜け毛
治療
以下は、眼瞼炎に対する治療方法と治療期間の目安などの情報です。
- 人工涙液(るいえき)や夜間に使う潤滑軟膏(なんこう)で、眼の乾燥を防ぐようにすれば役立ちます。これを長期間(最低3カ月)続けなければなりません。
- まぶたの縁にたまった残屑(ざんせつ)や、油分を柔らかくするために温湿布を数分間押すようにし、当てておくとかゆみや灼熱感が和らぎます。上下のまぶたを、まぶたの縁に向かってマッサージすると、マイボーム腺の詰まりを緩和することができます。できれば、1日2回するようにしてください。これも長期間にわたる治療です。
- まぶたの縁の清潔さを保つために、ベビー・シャンプーを温かめのお湯(約100ml)に数滴入れた液を清潔な布に浸し、その布で毎日そっとまぶたを拭うようにしてください。この作業をしやすくするために薬局で「Systane Eyelid Wipe」という便利な物を購入できます。
- 抗生物質の眼の軟膏を、始めの2週間ほど就寝前に付けることもあります(下のまぶたの赤い部分と、まぶたの縁)。
- 医師の判断により、ステロイドの点眼液あるいは軟膏も一時的に短期間使用し、まぶたの炎症を抑えることもあります。
- 脂漏性皮膚炎が原因であれば、皮膚や頭皮の治療が必要となるかもしれません。
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鳥居 泰宏(とりい やすひろ)
ノースブリッジ・メディカル・プラクティス
メルボルン大学医学部卒業。Northbridge Family Clinicを昨年閉院し、現在Northbridge Medical Practiceで診療中