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法律相談室/責任のなすり合い―落ち度があったのはどっち?

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知ってると知らないでは大違い!
日豪プレス 法律相談室

第57回 責任のなすり合い―落ち度があったのはどっち?

オーストラリアのほとんどの州において、事故の被害者が賠償金を得るには、賠償請求相手の過失が原因で事故が起きたことを証明しなければなりません。自動車事故、労働災害、点検不十分の階段での転落事故なども含め、人身傷害に関する賠償請求では、被害者に落ち度がなかったことを証明する必要があります。

ある人の不注意が原因で誰かがけがをした場合、不注意だった人は自分が招いた損害に対して法的責任を負うことが法律で定められています。

このルールには、もちろん例外もあります。シートベルト未着用で車を運転していた、ヘルメットなしで自転車に乗っていた、階段で転落した時に滑りやすいサンダルを履いていたなど、被害者も事故原因に何らかの形で寄与していた場合、被害者が得る賠償金は、10パーセント、20パーセント、50パーセントというように寄与過失の割合分減額されてしまうでしょう。

裁判所は、被告の行為によって原告が負傷したかどうかを考査することになりますが、これに関する有名な判例を1つ挙げましょう。「Barnett v Chelsea & Kensington Hospital」は、腹痛と嘔吐の症状により病院に駆け込んだ3人の男性が、病院からは自宅に戻って休息し、掛かり付けの医者を呼ぶよう指示され、その5時間後に1人の男性が亡くなった案件が争われた裁判です。男性たちはヒ素入りのお茶を飲んで体調不良に陥ったことが明らかになり、男性の死亡原因はヒ素中毒でした。亡くなった男性は、病院に駆け込んだ際に入院して治療を受けていたとしても、ヒ素中毒で亡くなっていたという医学的証拠が提出され、病院側の過失は証明できませんでした。

一方、賠償請求に関して“過失”制度を採用していない地域もあります。例えば、ニュージーランドでけがをした場合(その国の居住者、旅行者のどちらでも)、ニュージーランドは“無過失”制度を採用しているので、国の機関が治療費を負担します。しかしこの制度は柔軟性に欠けるので、“過失”制度の国で賠償請求を行って賠償金を得るのと比較して、一般的に“無過失”制度下で被害者が得る賠償金はかなり少ないのです。

事故でけがをしてしまった時には、人身傷害・賠償請求分野を得意とする信頼できる弁護士を見つけ、サポートを受けることがとても重要です。専門家に依頼することで、複雑な賠償請求手続きが円滑に進むというだけでなく、賠償金に関しても最善の結果を得られるという利点があります。


ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。

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