第56回
「外国人の夫 ― 理想と現実」編②
【前回までのあらすじ】
極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。
国際結婚の良いところ ―ハーフの子どもは可愛いか、否か―
私が最初の子どもを妊娠した時に、少なからずの人数に「名前は『ロリ』と付けたら良いよ」と言われた。その心は「ロリポップ(=棒付きキャンディー)」だからだそうである。その中には校長もいたし、オーストラリア人もいた。国は違えども、人の考えることは皆同じと思える。
さて、我が娘にはさすがに「ロリ」ちゃんとは付けなかった。しかし、娘の同級生の中には、そうやって名前をからかう男子もいるらしい。そういうくだらないギャグを言うのは、みんな男というのは共通している。
妊娠中の私は、北海道の高校英語教師だった。女子高校生は私に「ハーフの子どもは、絶対可愛いよね」「子どもが産まれたら、絶対に見に行くからね!」と毎日のように言われたので、かなりのプレッシャーになってしまった。「もし生まれた子どもが、可愛くなかったらどうしよう……」などという心配を、当時の私は本気でしていたのである。
その反対に、男子生徒の関心事は「どうやったら子どもができるのか?」にあった。私たちは、外国人がほとんどいない辺ぴな場所に住んでいたので、(どう見てもカッコ良くない普通のおじさんである)夫のすることなすことが、彼らにとっては全て関心事になったのだ。
男子生徒A「先生の旦那さんって、背が高いよね?」
私「そうね、186センチあるわよ」
男子生徒B「そしたら、アソコも大きいでしょう?」
私「……」
あまりにも、私の妊娠が話題になるので、ノイローゼ気味だったのだろう。ある日私は「やめてー!」と叫んで、目が覚めた。男子生徒Cが、私のお腹の上でジャンプする夢を見たのだ。
高校生の期待を一身に背負って(?)我が子は産まれた。産まれたての赤ん坊は「猿みたい」と形容されることが多いようだが、私の娘は「猿」どころか、色白で、まぶたの皮膚は薄っすら紫で、白くてまるで「白雪姫」のようだった。いや、親にとっては、どんな子どもでも白雪姫であり、王子様なのである。
ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中