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ネズミから犬に感染するレプトスピラとは

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Q

最近シドニーで、ネズミから犬に感染するレプトスピラという病気が流行っていると聞きました。どんな病気なのでしょうか。(20代女性=ウェブ・デザイナー)

A

レプトスピラ(Leptospira/Lepto)は、らせん状の細菌で、犬だけでなく人間にも感染する人獣共通感染症の1つです。レプトスピラは種類(血清型)が200以上もあり、その内病気を引き起こすのは10種類ほどです。どの種類に感染するかで、熱や嘔吐(おうと)などの軽いもの(または全く無症状)から重篤な腎不全や肝不全で死に至るまでと、幅広い症状がみられます。

シドニーにおけるレプトスピラ

レプトスピラは世界中に存在する細菌ですが、これまでシドニーで犬のレプトスピラ症が見られたことはほぼありませんでした。今年に入って、サリー・ヒルズやレッドファーンなどで5匹の犬での感染が確認されています。これは、シティー中心部で行われている大規模な土地開発によって、ラットなどの生息地域が変わったことが原因だと考えられています。

感染経路

主にネズミやラットなどが保菌し、尿に排出されます。菌は湿った土壌で何カ月も生息するため、ラットの尿に汚染された土や水たまりに接触したり、汚染された食べ物を食べたりすることで感染します。
 感染後二カ月は尿から菌が排出されるため、感染した犬の尿から他の犬や人間にも感染が広がる可能性があります。

症状

軽い場合は発熱、食欲不振、下痢、嘔吐などです。重症の場合は腎不全による尿毒症や、肝不全による黄疸などが見られ、回復しても慢性的な臓器機能不全の後遺症が残ってしまうことがあります。レプトスピラに感染しても、特に症状の現れないまま自然治癒する個体も多くいます。この場合は回復後、長期間、尿と共に菌を排泄し、他の動物への感染源となります。

診断

血液検査か尿検査で分かります。特徴的な症状がないため、軽症の場合は見過ごされてしまうことが多くあります。

治療

抗生物質の投与と、症状に応じて支持療法を行います。ほとんどの犬が回復しますが、重症の場合は臓器機能不全で死んでしまうこともあります。

予防

犬のレプトスピラの予防にはワクチンがありますが、全ての種類をカバーできるものではありません。レプトスピラの種類は国や地域、季節などに左右されるので、その地域で多く見られる血清型を数種類含むワクチンが使われます。
 また、レプトスピラは人間にも感染する可能性があるので、感染の対策として普段から以下のことに気を付けましょう。

  • 保菌動物であるラットなどの駆除
  • 汚染が疑われる土壌や水源との接触を避ける
  • 動物の排泄物の適切な処理

幸いなことに、ネズミと多く接触するであろう猫は、レプトスピラに対して抵抗があるので、病気になることまずありません。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せ頂いたご相談は、紙面に掲載させて頂く場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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