第13回規制されている犬種と気性の荒い犬
我が家からほど近い場所にあるレンタル倉庫会社には、夜になるといかにも獰猛(どうもう)そうな真っ黒な犬が敷地内に数匹放たれている。番犬として活躍するこういった気性の荒い犬たちには、オーストラリアの州や市によってさまざまな規制があるようだ。
例えば威風堂々とした立ち姿が美しい、日本の土佐犬。QLD州やNSW州などでは法的規制された犬種「Restricted Dog」となり、許可がなければ飼うことはできない。他にもアルゼンチン原産の狩猟犬や闘犬として交配されてきた、ドゴ・アルヘンティーノ、ブラジル原産でブラジリアン・ガード・ドッグとも呼ばれるフィラ・ブラジレイロの他、闘犬として名高いピット・ブル・テリアとアメリカン・ピットブル・テリア、スペインのカナリア諸島原産の家畜や財産を守る番犬として繁殖されたドゴ・カナリオ(ペロ・デ・プレサ・カナリオ)などの飼育も規制されている。
またどんな犬種やサイズであっても、人間や他の動物に重大な脅威となる行為をした犬や、実際に攻撃してしまった犬は、危険な犬「Dangerous Dog」として規制の対象になる。犬が誰かにひどいけがを負わせてしまった場合には、最悪のケースではすぐに安楽死させられてしまうこともあるようだ。重大な、とまでは言えない行為の場合には脅威的な犬「Menacing Dog」として同じように規制の対象となる。実際の被害が起こる前であっても、市職員など権限の与えられた人びとに危険、または脅威になるとみなされる場合にも、同じように規制の対象となる。
番犬にも市によって規制がある地域もあり、特にブリスベン市では「Beware – Dangerous Guard Dog」と書かれた看板に高さ5センチ以上の文字で24時間連絡のつく電話番号も掲示しておかなければならない。こういった規制を受ける犬たちは、マイクロチップやタグを付けておくことはもちろん、指定された大きさで周囲に注意喚起する看板を掲げることやフェンスの高さを始めとした飼育状況にも規制があり、通常より高額な犬の登録料を毎年支払うこととなる。そして公共の場へ連れ出す場合には、口輪をして去勢しておくことも義務付けられている。
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。数年前にシェットランド・シープ・ドッグの2頭が亡くなり、現在はオーストラリアで古くから牧羊犬として愛されているボーダー・コリーのスパーキーとゴールドコーストで暮らす。
Web: www.yokolance.com.au