第3回 為替はどうして動くのか?(その1)
外国為替市場とは、さまざまな通貨の売買がされている市場です。モノの値段は需要と供給のバランスによって決定されますが、通貨も例外ではありません。例えば、鉄鉱石をオーストラリアから日本に輸出している企業がその販売代金を日本円で受け取るとします。その会社はオーストラリアで鉄鉱石を採掘するための機械や輸送するための車両の購入、社員への給与などに豪ドルが必要となるため、その日本円を豪ドルに交換しなくてはなりません。つまり、その会社は日本円を売って、豪ドルを買うという取引が必要となります。このような取引が増えることで豪ドルの需要が高まり、円安・豪ドル高の方向に進みます。
一方、オーストラリアの会社が日本から商品を輸入する場合、豪ドルを日本円に交換して代金を支払う必要があります。その際、豪ドルを売って日本円を買う取引が行われ、円高・豪ドル安の要因となります。長期的に輸出金額が輸入金額を大きく上回る状態が続くと、その国の通貨に対する需要が増えるため、その通貨の価値が上がる傾向にあります。2000年からリーマンショック前の07年にかけて豪ドルが大きく上昇していたのも、中国の経済発展によりオーストラリアの主な輸出品である鉄鉱石や石炭の輸出が大きく伸びていたことがその一因と考えられます。
また、投資家の行動も為替に影響を与えます。例えば、多くの日本の投資家がオーストラリアの株式や不動産などに投資を行うと、日本円を売って豪ドルを買う取引が増えます。これにより、豪ドルの需要が高まり、円安・豪ドル高の方向に進みます。逆に日本の金融商品に投資するオーストラリア人が増えれば円高・豪ドル安となる可能性が高まります。
最後に、重要な要因として物価の変動があります。物価が上昇する(インフレ)ということは、お金の価値がそれだけ下がったという意味でもあります。逆に、物価が下落する(デフレ)ことは、お金の価値が上がることを意味します。一方の国でインフレが進み、他方でデフレが進めば、インフレの国の通貨は価値が下落し、デフレの国の通貨は価値が上昇する傾向が見られます。
為替市場を動かす要因は長期の方向性に影響を与えるものと、短期・中期的な市場変動をもたらすものがあります。今回見た要因は長期的な方向性に影響を与えると考えられています。次回のコラムでは短期・中期な要因について見ていきます。
KVB Global Markets
取締役日本部門ヘッドチーフFXカスタマー・ディーラー
山田悟