不動産のプロに聞く 豪州不動産事情
第88回
春季の不動産の見通し
オーストラリアの住宅価格は2019年8月に0.8%の上昇がみられました。不動産売買取引が最も動く春になりましたが、まだ最初の週の時点では、オークション・クリアランス率は83.1%と冬の最終週よりも低くなっています。豪準備銀行(RBA)が金利を1.5%から1%に下げたこと、住宅ローンの審査方法が変更になり一部の人が借りやすくなったという2つの政策の変更から、今まで不動産市場の低迷により動かなかった買い手が、動き始める時期に移るのではないかと予想されています。これは、RBAが金利を下げたことにより住宅ローンの金利が3%未満になるとも言われており、買い手の増加につながると予想されるためです。需要に対して、市場に出ている物件数が少ない状況ですが、今後数カ月にわたって需要が持続することが期待できそうです。
春は不動産が動く時期で、販売される住宅の数は通常だと春にピークに達し、住宅の販売が最も盛んな時期は10月から11月となります。昨年は不動産価格が落ち込み、住宅を競売にかける人も少なかったのですが、だからこそ待ちに待った人たちが動き始める時期として期待が持てるかもしれません。住宅の不動産取引のピーク時期に間に合わせるためには、今から準備を始める必要があります。売り手がこの春に物件を市場に出すことに自信を持っていれば、買い手も増え、売買価格も上昇するのではないかと考えられます。逆に言えば、買い手側としても物件価格が上がりきってしまう前に購入するのが賢い戦略でしょう。今期の住宅価格が今年の残りの期間に上昇するか下降するかは、売り手や買い手が状況をどれだけ予想し、売買の準備を進めているかによるかもしれません。
スターツ・インターナショナル・オーストラリア
取締役シドニー支店長
寺田環
NSW州、VIC州不動産業者免許(フル・ライセンス)所持