第22回:御所車に花をのせて
こんにちは。いけばな講師をしていますYoshimiです。季節はいつしか春となり、花が一斉に開花し始めました。花の後を追うように新芽も顔を出して、私が手入れをする庭も賑やかになりました。皆さまいかがお過ごしですか? 10月の日本は白露の美しい秋ですが、オーストラリアは季節が真逆なので、季節感が狂ってしまいそうです。春爛漫な花々を見ると花車(はなぐるま)を思い出します。
花車とは御所車(ごしょぐるま)に花を乗せたものです。その御所車とは平安時代の貴族の移動手段で、牛に引かせる車です。和装(特に振袖の柄)にも描かれていたり、雛祭りの雛壇飾りのお道具の1つであったり、私の母が御所車が描かれた物を見ると特別な物のように言っていたことがとても印象に残っています。
花御所車には、幸福の象徴である花で満たされた様子から、幸せにあふれますようにという意味が込められていたと言われていますので、娘の成長を願う母の想いもあったのではないかと思います。
御所車は現代では、縮小された調度品に花を飾り、お正月祝いやセレブレーションなどにホテルやオフィスのエントランスにも飾られています。ご覧になったことはありませんか? とても華やかで雅やかな物です。写真のような花器であれば数千円で購入できますので、ご自宅でも簡単にいけられます。
お花もオーストラリアの物で十分に奇麗にできると思います。大王松(松)に見立てて、スチールグラスというオーストラリア原生の細長い葉を束ね、桜の枝を少しカットして入れたら、日本の伝統的な風情を感じられますし、他にも色が変わったプラタナスの葉を何枚か入れてカーネーションなどを合わせると、実り多い季節感を感じることもできます。
懐かしい自国の植物を、住まいにしている土地で見つけた時にホッとできるのも、植物から力を頂けるからかもしれませんね。身近にある草木花で、たまに望郷の想いにふけってみるのも悪くないかもしれないです。
Yoshimi
草月流華道講師。幼少の頃から花を嗜む。学生の頃、本格的に活動を始め大阪高島屋に出展。兵庫県議会公館迎え花を担当。シンガポール駐在中に趣味の油絵といけばな展をシンガポール高島屋で行う。現在はシドニーのセント・アイビスのスタジオで華道教室フラワー・イン・ライフ(www.7elements.me)を開講