福島先生の人生日々勉強
器
人間は感情に左右される生き物です。今日1日を心穏やかに朗らかに過ごしたいと思っていても、ストレスは多いし、時間も足りない。自分では大きな心でありたいと思っていても、その小ささに情けなくなる時もあるでしょう。だからと言って、その度に怒っていたらどうでしょうか。怒ることは簡単です。一時はそれで済むということもあるかもしれませんが、それで本当に解決するかと言えば、そうでないことのほうが多いはずです。では、どうすれば良いのでしょう。
高度そうに見えて一番楽な方法は、「俯瞰(ふかん)」です。「なるほど、今、こういうことが起きて、私は怒っているのだ」ということを知るのです。怒っている時は、怒る以外のことは何もできなくなります。相手に傷を負わせるための攻撃を仕掛けてしまう、つまり、野性的で粗野な行動に終始してしまいます。そのような時、「怒りの感情は私たちから考える心を奪う」ということを覚えておくだけでもずいぶんと失敗は減ります。もしも怒りを感じたら、その瞬間を直ちに手放してください。
失望感から来る怒りもあります。「もうおしまいだ」「こんなことになるとは思わなかった」という気持ちが怒りになるのです。そのような時も、失望感に対処する必要はありません。他者への期待が怒りにつながることもあります。相手が自分の期待通りに応えてくれないと、怒りの感情が湧いてくるのです。しかし、湧き上がる怒りの感情と戦うことはできません。今は何もできないということを知り、意識的に、ただ起きていることを俯瞰する目を持ちましょう。初めは上手くいきませんが、習慣にしてしまえば楽になります。怒りをこらえるという方法もよく言われるところですが、それさえも腹が立つという人なども、「怒りに対して、怒りを覚えない」ようにするのが、実は一番楽なのです。
よく「器が大きい、小さい」と言いますが、この見方は、感情のコントロールとして「俯瞰」する際に感覚的要素を取り入れた良い方法でもあります。自分の心を器に例えてイメージしてみてください。小さいお椀に塩をたっぷりひとつかみ入れると塩辛くて飲めませんが、大きな湖にひとつかみ塩を入れたところで塩辛くはなりません。私たちの心は、この水のようなものです。「塩」が体験する問題だとすると、自分の心を広げれば、大した問題ではなくなります。このイメージ・トレーニングは真理に基づいているため、意外と簡単に役に立ちます。空には天の川があり、銀河系へと広がっていきます。宇宙から見れば、地球さえ数多ある星の1つに過ぎません。私たちの世界には制限がなく、器は、自分が思っただけ大きくすることができます。全ては自分の器次第なのです。
教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。34年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。