第111回 日本代表
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu
「INASグローバル・ゲームス」をご存知だろうか。「国際知的障がい者スポーツ連盟(INAS)」が知的障害を持つ人びとの国際総合スポーツ競技大会として4年に一度開いている大会で、その第5回大会が筆者が住むブリスベンで10月9日から11日間の日程で行われた。
大会直前の来豪前夜に、同大会に出場するフットサル日本代表とひょんなことからコンタクトを取ることができた。その縁から、時間をやり繰りしてブリスベンにやってきた“日本代表”を3日間ほど取材する機会に恵まれた。
知的障害者の若者によるフットサル。今までに観戦したことがなく、ほとんど予備知識もないままに取材に行ったのが、大会3戦目のサウジアラビア戦だった。昨年行われた英連邦大会で新設された自転車競技のヴェロドロームのバンク周回内部をフットサル・コートとして使用する会場は、平日の日中ということを差し引いたとしても寂しいものだった。閑散というか数えられるレベルの人しかスタンドにはいなかった。
それでも、コート上で繰り広げられる熱い戦いには目が釘付けになった。フィジカルは同世代の健常者と全く見劣りしないだけに、そのプレーの質とレベルはイメージしていたよりも圧倒的に高かった。何も知らずに観戦したら、ほとんどの人は健常者のそれなりのレベルのフットサルの試合と思うはずだ。
それでも、他の障害者サッカーと違って見た目でほとんど判別の付かない知的障害者によるサッカーとフットサルは、その特性からなかなか一般の理解が進まないハンデを抱える。そのことも相まって、競技自体の認知度は日本でもかなり低い。強化費も、同じく「日本知的障がい者サッカー連盟」管轄の知的障がい者サッカー代表と折半するため財政面での余裕もない。
そんな彼らが、4年に一度の晴れ舞台の海外遠征ではるばるブリスベンにやってきた。彼らの世界挑戦を同じ会場で取材する機会に恵まれ、大会唯一の勝利の瞬間にも立ち会えた。その挑戦は、本紙「コミュニティー・ニュース」で詳報の通り、5試合1勝4敗で7チーム中6位という成績に終わった。それでも、限られた時間で育成強化に励んできた木村純一監督を始めとしたスタッフと10人の選手は、成績以上に大きな成果と手応えをつかんだ大会となった。
純真無垢(むく)な若者が一心不乱にボールを追う姿、そして彼らが青春を懸けるその競技を1人でも多くの人に知ってもらえたらうれしい。
【うえまつのひとり言】
楕円球のW杯が終わった。日本開催となった今大会は、盛り上がりが心配されていたのが嘘のように、開幕後はジャパンの快進撃と共に列島を沸かせた。日本サッカーの今の隆盛も、2002年で世界を知り、日本代表が活躍したことが大きかった。ラグビーもそうなれるのか、見守りたい。