不動産のプロに聞く 豪州不動産事情
第89回
不動産市場に回復の兆し
2017年半ばからシドニーとメルボルンの不動産市場が不安定期に入り、それから2年間価格の低迷が続き、投資家は不動産市場をじっくりと検討する時期になりました。しかし、連邦選挙の結果、ネガティブ・ギアリングやキャピタル・ゲインの税政策という投資家にとってネガティブな政策が廃止され、投資家は再び行動を開始しようとしています。オーストラリアのロビー・グループ、Property Investment Professionals of Australia(PIPA)の会長であるピーター・クーリゾス氏は、ここ数カ月で買い手の購買欲が上昇し、シドニーとメルボルンの不動産価格も上がったと述べています。更に、このPIPAの会員の調査結果から、「投資家の82%は今が住宅不動産を購入するのに良い時期だと考えている」ことと、「調査対象者の約48%は今後6カ月~12カ月以内に不動産購入を検討している」ことも分かっています。
不動産市場のピークから2017年末にかけてシドニーとメルボルンの不動産価格の中央値は10%以上落ちていましたが、金融情報サービス業大手のCoreLogicによると、9月にこれら2都市の住宅価格は1.7%上昇し、回復の兆しが見えているとのことです。ブリスベンとアデレードは安定しており、キャンベラは1%上昇、またオーストリア全土で住宅価格の中央値は1.1%上昇しています。今後投資家が動き始めたことにより、より一層不動産価格が上昇していくことになりそうです。ANZ銀行のシニア・エコノミストのフェリシティ・エメット氏も同様に不動産市場の回復の兆しを述べています。価格だけでなく、建設に関しても今後数カ月のうちに回復し始めそうです。投資家からすると、経済の状況についてと融資へのアクセスがまだしづらいことが懸念点であるようですが、不動産市場に関する見通しはかなり良好なようです。
スターツ・インターナショナル・オーストラリア
代表取締役
寺田環
NSW州、VIC州不動産業者免許(フル・ライセンス)所持