検索
Close this search box.
検索
Close this search box.

日豪プレス・メディア体験プログラム2019近畿大学生編②

SHARE

日豪プレス・メディア体験プログラム2019
近畿大学生がシドニーで記者体験

9月末から11月上旬の6週間にわたって、近畿大学の学生6人が日豪プレスの「メディア体験プログラム」に参加した。同プログラムは学生たちに実際に編集部の一員として取材活動を行ってもらい、それを記事に仕上げるところまで指導するというもので、将来のキャリアに向けて貴重な経験を積めるということで好評を博している。今回、学生たちは日本政府観光局シドニー事務所、国際交流基金シドニー事務所、NSW大学の3カ所を取材。本特集では学生たちが完成させた記事をプログラムの成果物として掲載していく。

国際交流基金シドニー事務所インタビュー

オーストラリアと日本文化の架け橋に

シドニー・セントラル駅から徒歩7分のところにあるショッピング・センターの地上4階にある国際交流基金(ジャパンファウンデーション)シドニー日本文化センター。彼らは、日本の文化をオーストラリアの人びとに伝えるために日々活動しており、その範囲は日本語教育の支援から日本映画祭のようなイベントまで実に多岐にわたっている。今回、日豪プレスでインターンシップを行う近畿大学の生徒2人がその活動内容を知るべく取材に向かい、所長の和田好宏氏にインタビューを行った。(取材・文=石川さくら、水本隆)

日本文化を紹介するための取り組み

――こちらでは主にどのような活動をなさっているのですか。

私たちは、日本語では国際交流基金、英語の名称ではTHE JAPAN FOUNDATIONという1972年に特殊法人として設立された組織です。海外との文化交流を行っている日本で唯一の政府系組織で、海外との交流の機会を作ったり、日本の文化の紹介、日本への海外文化の紹介などを行っています。活動内容は大きく3つの分野に分かれ、それぞれ文化・芸術活動、日本研究・知的交流、そして日本語教育になります。

1つ目の文化・芸術活動は、マンガなどのポップ・カルチャーを含めた日本の芸術や文化を、展覧会、舞台公演、あるいは文学、映画を通じて紹介するというものです。最近では、昨年開催した「アニメ・アーキテクチャー」という展覧会が好評でした。

この展覧会は、アニメやマンガといったポップ・カルチャーに興味を持つ外国の方が多いという点と、日本の現代建築が世界で非常に高く評価されている点を組み合わせて企画しました。また、NSW州美術館で江戸時代から現代までの日本の美術を紹介する「ジャパン・スーパーナチュラル」という展覧会が行われることに伴い、連動企画として、日本のホラー・マンガを紹介する「レトロ・ホラー」という展覧会とこれに関連する講演会を行うなど、より幅広く日本を知ってもらえる機会を設けました。このように、オーストラリアのニュースやイベントに合わせた催し物を行うこともあります。私たちの活動がきっかけとなって、より広く、より深く日本文化を知ってもらえたらと思います。

取材当時行われていた展示イベント「RETORO HOROR: Supernatural and the Occult in Postwar Japanese Manga」の様子
取材当時行われていた展示イベント「RETORO HOROR: Supernatural and the Occult in Postwar Japanese Manga」の様子

2つ目の日本研究では、主にさまざまな分野の日本研究者や大学、シンクタンクが行うシンポジウムやリサーチ・プロジェクトの支援を行っています。また、フェローシップを設け、研究者の訪日研究の支援を行っています。この中には若手研究者が博士論文を書くための最終研究で訪日する際の支援も含まれます。また、オーストラリアで行っている私たち独自の取り組みとして、「NEW VOICES JAPANESE STUDIES」というオンライン学術誌があります。ここでは若手の研究者に対して論文を発表する機会を提供しています。

そして3つ目の日本語教育では、特に先生方への支援活動を行っています。詳しくは後でお話しします。また、J-COURSEという一般社会人向けの日本語講座を開設しています。オーストラリアで唯一、初心者からかなり深い日本語能力を持っている人まで、全てのニーズに沿えるようなコースをそろえています。J-COURSEでは、国際交流基金が制作した『まるごと 日本のことばと文化』(『まるごと』)を教科書として使用しています。日本語でのコミュニケーションを重視し、日常生活でのいろいろなシーンを題材にした教科書なので、実際に使える日本語を学習できます。J-COURSEの生徒は20代から70代まで年齢層もさまざまで、みんな熱心に勉強しているので感心させられます。

教育が文化交流の花を咲かせる

――日本語教育において、先生方にはどのような支援をされているのですか。

国際交流基金では、3年に1度、日本語の学習者が世界中にどれくらいいるのか、各学校に何人の先生がいて、何人の学習者に教えているのかという「海外日本語教育機関調査」という調査を行っています。その調査によると、オーストラリアには2018年の時点で学習者数が41万人いました。しかし、それに対して先生の数はたった3,000人というアンバランスな数字となっています。もちろん、大学の大教室で1度に400人教える先生もいれば、小規模なクラスで教える先生もいますが、単純に数字だけ見ると1人の先生が100人以上の生徒を教えているということになります。

また、オーストラリアの場合ですと、日本人で永住権を持っている先生もいますが、小学校から高校までの先生たちの大半はオーストラリア人と、必ずしもネイティブの日本語話者ではありません。そのため、日本語がネイティブではない先生たちの日本語の能力をブラッシュ・アップし、日本語教師としてのスキルをより高めることができる教授法のセミナーを年に2回開いています。また、当館所属の日本語教育の専門家が、オーストラリア各地で教師向けのセミナーを開催し、彼らの教える力そのものを高める活動を行っています。同時に、彼らの負担を減らすために、そのまま学校教育の場で使えるようなオーストラリアのカリキュラムに沿った教材を作り、オンラインで公開しています。

――日本語を学ぶ人は他の言語と比べて多いのですか。

他の言語においては、そのような調査は行われていないので詳しくは分からないですが、各州の教育省が、公立の学校でどのくらいの人がどの言語を学んでいるのかという統計を毎年取っています。その統計によると、州によって差がありますが、どの州においても日本語が上位3位以内、ほとんどの州で1位となっています。総数で考えると日本語が圧倒的に多いことが明らかになっています。

――オーストラリアの中で日本語を学ぶ生徒が多い地域はどこですか。

QLD州やVIC州が非常に多く、それに次いでNSW州となっています。15年と18年の調査を比較すると、日本語を学ぶ人が3年間で5万人増えています。

――3年間で5万人増えた理由は何ですか。

QLD州とVIC州で教育制度の変更があったということが大きな要因だと思います。もともとオーストラリアは多文化社会なので、小学校の段階から異文化理解や外国語理解を重要視したカリキュラムが設定されています。QLD州とVIC州の小学校には以前から「異文化理解」という授業があったのですが、その授業に新たに「外国語の言語学習」という目標が加わり、必修化されました。そのため、日本語学習者も増えたのだと思います。教育制度の変更がある前から学習者数は上がったり下がったりしており、2000年代の前半には学習者が減った時期もありましたが、基本的に日本語学習者は増えてきています。

――J-COURSEと一般の日本語学校の違いは何でしょうか。

一般の日本語学校と違う点は2つあると思います。1つ目は、初心者向けから上級者向けまでコースがそろっている点です。そして2つ目は、国際交流基金で作った「JF日本語教育スタンダード」(「JFスタンダード」)という枠組みに沿った日本語学習の機会を提供している点です。「JFスタンダード」というのは、異なる国や機関でも同じ基準で日本語能力を説明できるようにしようという取り組みです。それに基づいて作られた教科書『まるごと』で教えている点が、非常にユニークで、他の日本語学校との違いなのかなと思います。喜ばしいことに、大学でこの教科書を取り入れているところもありますし、シドニー内の学校でも、教科書として紀伊国屋書店などから買って使っているところがあると聞いています。

日豪関係向上のために尽力したい

――日本文化を伝える上で気を付けていることはありますか。

センターの中には図書館が併設されており、日本語文献だけでなく、マンガや絵本もおいてある。
センターの中には図書館が併設されており、日本語文献だけでなく、マンガや絵本もおいてある。

まず大切なのは、自分自身が日本について知っていなくてはいけないということです。興味を持っている人の期待に応えるためにも、自分も日本について広く関心や知識を持っておかなくてはならないと思います。また、自分たちが面白いと思ったことが、必ずしも外国人のニーズに合っているとは限らない時もあります。知らせたいものと知りたいもののバランスを取るのが難しいです。偏った見方で日本を知ってもらうのではなく、全体的に日本の文化を知ってもらえるようにすることが大切です。例えば、マンガやアニメだけでなく、伝統的な日本文化にも興味を持ってもらえるような工夫を当館でもしています。

――今後取り組みたいことはありますか。

特に力を入れたいのは日本語教育です。オーストラリア人には、日本に対して親しみを持っている人が多いように感じます。その理由の全てとは言いませんが、その根底には日本語学習の浸透があると思います。先述した「海外日本語教育機関調査」において、オーストラリアは日本語学習者数では世界第4位ですが、人口当たりの学習者数は世界第1位なのです。このように日本に興味を持ってくれた人びとの更なる日本文化の理解のために、当館でも引き続き下支えをしていきたいです。このような活動が、日本文化を更に広めるきっかけとなることを願っています。

和田好宏(わだよしひろ)
プロフィル◎1987年に国際交流基金に就職後、国内では東京本部、埼玉の日本語国際センター、大阪の関西国際センターに勤務。海外ではニューデリーや2度のニューヨーク勤務を経て、2016年から現職

SHARE
特集 / インタビューの最新記事
関連記事一覧
Google Adsense