福島先生の人生日々勉強
100年と続かないご縁
何かあった時、いつまでもくよくよしたり、怒ったりしていては、人生あっという間に日が暮れてしまいます。人は死ぬのです。死ぬと分かっていて限られた短い人生を生きているのに、その貴重な時間を恨んだり、憎んだりするために費やしてしまうのはもったいないとは思いませんか。目の前にいる人のことが気に障っても100年と続かないご縁です。ましてやその人が大切な人ならば、楽しく笑顔で過ごすのが良いに決まっています。
良いことがあれば幸福で、悪いことがあれば不幸だと決めつけるのも、この際やめてしまいましょう。何がどう転ぶか分からないからということではなく、いずれも「人生」に過ぎないということです。私たちには楽しむ権利と同様に、苦労する権利も有り難く頂いて生きているのです。そこに良し悪しはありません。ただシンプルにそれが人生だというだけのことです。
SNS上の個人攻撃を手近な憂さ晴らしと考える人もいますが、人を傷付けて気が晴れるなどということは、一時的には爽快な気分がしたつもりでも、人を傷付けたという自責の念がいつまでも残り、ねじけた心と葛藤しながら生きていくことになります。いかに生きようと「人生」ですから、そうした道を選ぶのもその人の自由ということになりますが、内外から罰せられ、行き場を失った心がさまよう先に果たして求める自由があるのか否か、結果は明らかです。
腹が立つ、というのは本能ですから、怒るということは誰にでもある普通のことです。それで自分をダメ人間だと思う必要は全くありません。ただ、いつもなら腹が立つだろう場面に遭遇した時、「いや、待って。ここで怒っていたら人生もったいない」と自分自身に語り掛けてみてください。それができたらもう大丈夫。もしそこで何か1つその場で自分にできることを見つけられれば、あなたはかなりの上級者です。
あるいは、怒らせる側に著しく思いやりが欠如していることも少なくありません。いつも同じようなことでなぜか誰かの不評を買ってしまうという場合は、原因が自己本位の態度や行動にあるのではと我が身を省みて、都度修正していくよう心掛ければ徐々に改善していきます。あの時ひと言声を掛けていれば、相手の目を見て話していれば、にっこりと笑っていれば、怒らせることはなかったということがほとんどです。「無知の知」というのは決して知識に限った話ではないのですね。いずれの立場にせよ、無意識を意識することで多くの不愉快は未然に防げます。「気付く」ことが大事なのです。
このコラムの著者
教育専門家 福島 摂子
教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中