日豪フットボール新時代 第127回
決意
NPLの古豪のまさかの降格に直面、来季の再昇格に尽くす決意をした選手について書く。
江本遼(25)、攻撃的MFとして、2季にわたって、NPLの古豪レッドランズ・ユナイテッド攻撃陣を牽引してきた。実年齢よりも若く見える小柄な礼儀正しい好青年も、1度ピッチに立つと豊富な運動量で体格に勝る相手の中でもしっかりと存在感を発揮する。今季終了直後には、降格チーム所属ながらもNPL選抜に選出され、プロとの対戦機会を得た。
自らを「ドリブルやパスで人を使いながら相手を交わしていくのが得意」と評し、チームのためにハードワークを怠らず、体を張ることも厭(いと)わない中盤の働き者はチーム・メイトの信頼も厚い。ただ、体格差もあって豪州のフィジカルの強さには苦労させられてきた。「屈強な相手に当たり負けすることがまだあるので、フィジカル面はまだまだ足りない」と自覚。週3回と少ない練習量を補うべく、体幹強化など自主トレを怠らずに続けてきた。
そんな江本の奮闘虚しく12位でシーズンを終えたクラブは、FQPL(州2部)への降格の憂き目に遭った。「(降格決定時は)茫然自失だったけれど、日が経つとだんだん実感が湧いてきた。2年お世話になった歴史あるクラブを降格させて本当に申し訳ない」と責任を感じた江本は、いち早く、来季の残留を決めた。
来季の最大の目標は、1年で必ずNPLに戻ること。そのために「チームの目標を明確にし、練習から100%の高い意識で臨む必要がある」と、3年目の来季は率先してチームを引っ張っていく。個人としては、持ち前のハードワークに加え、より貪欲に得点を狙うことを自らに課す。FQPLでは、これまで以上にフィジカルがフォーカスされる局面が出てくることも織り込み済み。パワーアップした小さな巨人が中盤で存在感を示せれば、クラブが1年で“いるべき場所”に戻るのは難しくない。彼の決意のほどをピッチ上で見られるのを心待ちにしたい。
このコラムの著者
植松久隆(タカ植松)
タカの呟き「またもや、Aリーグ男女共にコロナ禍の直撃で変則的開催を余儀なくされている。ただでさえ試合数が少ない女子はリーグが成り立つのか。男子も、開催の短縮が噂されるなど先行きは不透明だ。安全第一とは言え、こんな状況が続くのは困ったものだ。3月末の日豪戦に影響が出ないかも心配」