第7回
現実逃避に打って付け
Coochiemudlo Island
Text, Photo: Taka Uematsu
カナならばクーチマドロー島か。慣れないと舌を噛みそうな名は当地の先住民部族の言葉で「赤い岩」。対岸から見える島の赤褐色の岩場がその由来だ。対岸からそれほどはっきり見えるかは眉唾だったが、これがしっかりと目視できる。何せ地元民が“クーチー”と呼ぶこの島は、対岸のビクトリア・ポイントからはわずか1キロほど。面積も4.1平方キロしかないその小島へは、小さなフェリーに揺られて10分少々。それでも、写真の艀はしけから島へのフェリーに乗り込むだけで旅気分になれるから面白い。
その島で、クリスマスのごく短い休暇を過ごした。到着前から、携帯電話の電波が悪く、SMSなどを使うのにフラストレーションが溜まると聞いていた。実際、通信環境は思った以上に悪く、いらいらしてしまってどうにもならない。だったらいっそのこと、滞在中は携帯電話をカメラとしてしか使わず、全ての機能をミュートにすることに。これが大正解。休暇に来てまで人間関係の裏表や浮世の移ろいに振り回されずにやりたいことに集中できる。唯一気になったクリケットのテストマッチも、つけっ放しのテレビで事足りる。出掛けにかばんに忍ばせた積ん読の本の内の2冊を読了。家族4人で島の周りを散歩したり、手付かずになっていたジグソーパズルに向かい合ったりとゆったりと時間が流れる。しばしの自省の時間も持てた。
ブリスベンからすぐの小島は、現実逃避の短期リトリートには最適。ただ、断っておくが見るべき物はほとんどない。あるのは平穏のみだ。