激闘!! オーストラリアンF1グランプリ2022 開幕直前! 観戦ガイド
モーター・スポーツ界最高峰フォーミュラー・ワン(F1)グランプリ(GP)世界選手権の第3戦、オーストラリアン・メルボルンGPの見所を紹介する。 解説・写真提供=板屋雅博
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年、21年は開催が中止されたが、3年ぶりとなる今年、メルボルンにF1GPがついに戻って来た。4月7日(木)から10日(日)までメルボルン市内アルバート・パークを会場に開催される。
昨年、レッドブル・ホンダのフェルスタッペンが初の年間総合優勝を果たし、メルセデスのドライバー8連覇を阻止した。今年、ホンダは表面上F1から撤退したが、実質上は依然としてエンジン・パワーユニット(PU)をレッドブルとスクーデリア・アルファタウリに供給する。
レッドブルのフェルスタッペンが連覇を果たすか、メルセデスのハミルトンが巻き返すのか、日本の新鋭、角田裕毅は上位に食い込めるか……。今年も興味は尽きない。
2022年のF1レース
既に第1戦のバーレーンGP(3月20日)、第2戦(3月27日)のサウジアラビアGPが実施された。開幕戦は長らくメルボルンGPが担ってきたが、コロナ禍の影響で21年からバーレーンがF1世界選手権開幕戦となっている。
バーレーンGPでは、予想外と言ってはファンに叱られるが、フェラーリのルクレールが優勝、2位にサインツと、好調を報道されていた古豪フェラーリが1、2位を独占した。フェラーリが優勝及びワンツー・フィニッシュを果たしたのは、19年のシンガポールGP以来のことで、3年間優勝から遠ざかっていた最古参チームが復活した。
年明けのテスト試走で好調だったフェラーリだが、ルクレールが予選と本戦を勝つポール・トゥ・ウィン。ルクレールは19年のイタリアGP以来となる通算3勝目となった。
メルセデス勢ではハミルトンが3位表彰台、ラッセルは4位に入賞した。レッドブルだが、王者フェルスタッペンはマシン・トラブルで脱落し、ペレスも最終周にストップして入賞を逃した。
第2戦のサウジアラビアGPではレッドブルのフェルスタッペンが優勝し、2位、3位がルクレール、サインツのフェラーリ勢、4位にレッドブルのペレスが入った。5位にメルセデスのラッセル、ハミルトンは10位に留まった。
第2戦までのメーカー別の成績は、フェラーリ78点、メルセデス38点、レッドブル37点で3強の戦いとなっている。
レギュレーションの変更
エンジンPU開発は22年から25年まで凍結されることが決まった。ホンダが撤退することや、メルセデスの独走を防ぐなどの目的がある。
車体下面と地面の間を流れる空気流を利用して、ダウン・フォースを獲得することを目的とした「グラウンド・エフェクト」が導入。そのため、F1マシンの外観が大幅に変わった。
また、10%のエタノールを配合したE10燃料を使用することが義務付けられた。
エンジン・パワーユニット(PU)とは
V型6気筒1.6リッター・ターボ・エンジンに、運動エネルギー回生機構(MGU-K)と熱エネルギー回生機構(MGU-H)が組み込まれており、エンジンPUと呼ばれる。
エンジン別勢力図
22年のチーム別エンジンPUの搭載状況は以下の通り。
- メルセデス: メルセデス、マクラーレン、アストンマーチン(英国)、ウィリアムズ(英国)
- フェラーリ:フェラーリ、ハース(米国)、アルファロメオ(スイス)
- ホンダ:レッドブル、スクーデリア・アルファタウリ
- ルノー:アルピーヌ
21年のホンダのドライバーズ優勝
レッドブル・ホンダのフェルスタッペンが、1位11回とメルセデスのハミルトンの1位8回を上回って、初の年間総合優勝を達成し、ハミルトンの8連覇を阻止した。
ホンダとしては1991年のアイルトン・セナ以来30年ぶりとなるドライバーズ・チャンピオンを獲得した。メルセデスの2番手バルテリ・ボッタスが1位3回を獲得したために、コントラクター(マシン製造メーカー)ではメルセデスが8連覇を達成している。
22年のホンダ
ホンダ(本田技研工業)は21年にF1から公式には撤退したが、子会社のホンダ・レーシング(HRC)を通じて、レッドブル及びアルファタウリの両チームに25年までF1エンジンPUを供給する。
レッドブルのエンジンの項目にはレッドブル・パワートレインズと記載されているが、実態はホンダのF1エンジン部門で開発・製造されたものとなる。22年の両チームが搭載するHRC製エンジンPUの名称は「RBPTH001」となった。
ホンダは、レッドブルとアルファタウリのテクニカル・パートナーとして名前を残している。
F1マシンの「HONDA」のロゴは「HRC」に置き換わったが、両チーム・ウエアの襟元には「HONDA」のロゴが残っている。両チームのレーシング・スーツ、角田裕毅のヘルメットには「HRC」、両チームの22年F1マシン(RB18、AT03)には「HRC」に加えて「HFD」(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)のロゴも入っている。
注目の角田裕毅(つのだゆうき、神奈川、21歳)
18歳でホンダの育成ドライバーとしてレッドブルに派遣され、昨年からF1に参戦した。アルファタウリの2番手選手だが、最終戦アブダビGPでは自己最高位4位に入賞した。ハンガリーGP6位、アゼルバイジャンGP7位、バーレーンGP9位、オーストラリアGP10位、ドイツGP10位など活躍し、合計32点を獲得して年間14位となった。
今年の目標は、優勝は当然だが、まずは3位以内の表彰台に立つことであり、好調なホンダ製エンジンPUと共に、メルボルンGPで活躍が期待される。
メルセデス(ドイツ)
今年のメルセデスは、ルイス・ハミルトン(英国、37歳)と新鋭のジョージ・ラッセル(英国、24歳)のコンビで戦う。
コントラクター8連覇を達成したメルセデスだが、今年の総合優勝は厳しいと予想されている。プレ・シーズンからマシンのパワー不足が指摘されており、ハミルトンも苦戦を予想している。
レッドブル(オーストリア)とスクーデリア・アルファタウリ(イタリア)
レッドブルは、マックス・フェルスタッペン(ベルギー、24歳)とセルジオ・ペレス(メキシコ、32歳)で参戦する。
レッドブルの弟分のスクーデリア・アルファタウリは、ピエール・ガスリー(フランス、26歳)と角田裕毅とで参戦する。
フェラーリ(イタリア)
ドライバーは、シャルル・ルクレール(モナコ、24歳)とカルロス・サインツ(スペイン、27歳)。F1の代名詞でもある名門フェラーリだが、プレシーズンから好調が伝えられており、今年の第1戦で3年ぶりの優勝を果たした。トップの一角に食い込めるかが、今年F1界の注目である。
フェラーリのエンジンPU出力はホンダやメルセデスと同等以上に性能を上げていると言われている。名門フェラーリの復活がF1活性化のカギであり、メルセデス、レッドブルの2強時代からフェラーリを加えた3強時代に戻ることが期待される。
アルピーヌ・ルノー(フランス)
ドライバーは、フェルナンド・アロンソ(スペイン、40歳)とエステバン・オコン(フランス、25歳)。F1の名門ルノーだが、アルピーヌにエンジンPUを供給するのみとなった。
今年、メルセデスやホンダと同様の構造を持つ新型エンジンを投入したが、信頼性の問題があるようだ。
アロンソは、18年にF1を引退したが、21年にアルピーヌ・ルノーから復帰している。これまで通算32勝(歴代6位)、年間チャンピオン2回(05年、06年)。マクラーレン・ホンダに在籍するなど日本にも馴染みが深い。トヨタ・チームとしてルマン24時間レースに参戦して総合優勝を飾っている。
マクラーレン(英国)
ダニエル・リカルド(オーストラリア、32歳)とランド・ノリス(英国、22歳)で挑む。63年設立でコントラクター優勝回数は3位の記録を持つF1を代表する名門チーム。2年前までルノー製エンジンPUを搭載していたがメルセデス製PUに切り替えている。
オージーのダニエル・リカルドは、パース生まれで11年にトトロッソからF1に参戦、14年からレッドブルに昇格し、3勝を挙げて3位となった。16年1勝3位、17年1勝5位、18年2勝6位と成績を残したが、19年にルノーに移籍、21年にマクラーレンに移籍したが、勝利がない。