第8回 Maroochydore / Maroochy Waters
“サンシャイン・コーストの絶景を愛でる
Eagle Street Pier / Brisbane City
Text, Photo: Taka Uematsu
「マルーチドー、マルチドール、マルチドア」カタカナ表記でこれだけ揺れが出る地名もそうはない。2番目が比較的多く使われるが、最後にルが強烈に発音されるわけでもなく、違和感しかないので、本稿では最初のマルーチドーを取る。
空と海が青く美しいこの国で20年弱も暮らしていると、そうそうの景色では驚かなくなった。それでも、今回の滞在先からの景色には目を見張った。見て頂くと分かるが、景色の構成要素としてはいたってシンプル。空、海、川、汽水域に浮かぶ艀(はしけ)に少々の陸地。
なんてことない景色だが、特筆すべきはその景色が持つさまざまな表情。それこそ、陽の高さ、陰り具合などで見せる姿が違う。
朝焼け、昼日中、夕焼け、夜で同じ景色が全く違って見える。そんな光のマジックに魅せられて、滞在中はことあるごとにこの景色をカメラに収めていた。
マルーチドーは、サンシャイン・コースト地域の政経文化の中心地。その名前の由来は当地の先住民の言葉で黒鳥を表すらしい。あ、そうか、どうりで、この時の滞在の主な目的だった子どものフットボール(サッカーとも呼ぶ)大会をホストした地元クラブの愛称は「Swans」。ロゴには白鳥ではなく黒鳥があしらわれているわけだ。
マルーチ川が海と出合うエリアは、マルーチ・ウォーターズと呼ばれる景勝地。今回のお宿もその一角にあり、眼下には、海と川とがゆったりと出合う汽水域が広がるのだ。家内が「ちょっと奮発し過ぎだったかな」と独り言つが、この景色を楽しめただけでもお得な気分だし、野暮は言うまい。
美しい思い出は美しいままでいた方が良さそうだ。