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環境とのハーモニー /花のある生活 – flower in life –

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海団扇と着色した木の根を合わせて、イソギンチャクのような面白い動きを出し、海のイリュージョン、ニモ(ディズニー映画)の世界を表現しています

第46回 環境とのハーモニー

 日本で四しくんし君子と呼ばれるものの1つに蘭の花があります。大きな玄関やエントランス・ホールに飾る西洋蘭とは違い、ここでは着物の伝統模様に書かれているような野山に咲く東洋蘭のことを指します。四君子には蘭の他に竹、梅、菊が入り、その姿や様子が高潔な君子に例えられ、そのように呼ばれています。

 あまり目にすることが少ない東洋の蘭は、ほのかに香り、いでたちが繊細で、代表的なものには春しゅんらん蘭や寒かんらん蘭などがあり、日向に自生する紫蘭が咲くと春の訪れを彷彿とさせる風情を感じます。

 古今東西を問わず蘭の存在は麗しく、また言ことほ祝ぐような風情を醸し出してくれます。

 今月の作品は海うみうちわ団扇(珊瑚の種類)を乾燥させたものと、胡こちょうらん蝶蘭、紫のバンダという蘭を使って、海の中のイリュージョンをいけばなにしました。青い色をした花器はイソギンチャクのようで器そのものが表現豊かで楽しくなります。

 オーストラリアの海はとても青く、太陽が出ている日はコバルト・ブルーが冴えて特に美しいものです。ヨットの帆や砂浜に打ち上げられる波の白いあぶくは、海の青い色と響き合って、さまざまなことを浄化してくれるように思います。

 いけばなを格調高い芸術として捉えられているかもしれませんが、どなたでも自由にいけることができます。今ある環境に調和させるようにいけてみたり、その場に合うものを作り出していったりすることで、その環境でしかいけることができない風情を醸し出して、観る人の響くような良いものとなっていくのではないかと考えます。

 調和を大切にする伝統的な和の文化は、今や各国で親しまれています。その場所の特徴的な雰囲気を感じて、周囲の環境にも左右されるいけばなの美しさを最大限に引き立たせるためには、そこにある状況であるとか、環境に考慮しつつ、花をいけることも大切な要素だと思います。花のある生活は日々の潤いであり、いける人と環境が花と一体になり表現できることは、いけばなの醍醐味に思われます。

Yoshimi

いけばな作家
Web: https://www.7elements.me/

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