今回は強形のバイリンガル教育、どの学校に我が子を入れるかを選択する時期、そして学校のカリキュラムについてご紹介したいと思います。
バイリンガルの子どもを育てる道筋における強形のバイリンガル教育は3つに分類されます。強形のバイリンガル教育の目的とは、基本的に「2つの異文化併存」と「2カ国語の能力の伸長」と「2カ国語の読み書きの力の伸長」です。
強形のバイリンガル教育で一般的なのは、オーストラリアのいくつかの学校にも存在している(日本語の)「イマージョン・バイリンガル教育」です。一般に想像される語学学習ではなく、英語を母語とするオーストラリアの子どもたちの第2言語の獲得を目指し、英語ではなく第2言語を使用して授業を行う教育です。さまざまな国で行われているため、研究も多くなされている教育の一種でもあります。
4〜6年という理想的な期間で行われること、1言語のみを用いる生徒と同じカリキュラムを使用すること、第2言語を50%以上の教授言語とすること、開始時点でなるべく生徒たちのレベルが均一であること。以上を最低条件として行われた場合、成功率が高くなるとされています。
ほかにも、母国語の伸長保持と同時に第2言語を習得する「維持型バイリンガル教育」もありますし、両言語能力を高めるとともに、いずれも教授言語として用いる「双方向型バイリンガル教育」もあります。インターナショナル・スクールはこの部類に入ります。しかし、授業が単一言語でしか行われていなければ、バイリンガル教育を行っているとは言えません。
言語政策もバイリンガル教育に影響します。特に少数派言語の教育政策がはっきりとしていなくても、政府の政策があるかどうかは、結局のところ少数派言語の子どもたちに影響を及ぼします(もし政策があるならば、それは少数派言語の子どもたちに影響を与えます。そしてもし政策がなくても、それでも少数派言語の子どもたちに悪い影響が及ぶのです)。
どの学校にわが子を入れるかを選択する時、予算や場所(便利さ)以外にも多くの条件が重視されます。カリキュラムや方針はもちろん、生徒の姿勢と教授言語、異文化の尊重、教師の言語能力、教師と生徒との会話、精神的なケア、そして教師や親の熱心さなどの条件に着目しながら観察し、それらに基づいて決断をすることが極めて重要です。
その成果は卒業生のアイデンティティーに反映されることになりますが、有名な研究者によると、大きな成果を出すには少なくとも4年以上の期間が必要なようです。いずれにしても、生徒が積極的に両言語でコミュニケーションを取ろうとしているかどうかが一番重要であることは確かです。
候補の(バイリンガル)学校のカリキュラムを検討する時には、そのカリキュラムに、単一言語のみを用いる学校と同様、一貫性がありバランスと連続性を表す特徴があることを確かめることが必要です。
最後になりますが、オーストラリアにいる日本人の場合、少数派言語の日本語を話す子どもにとっては、日本語の維持、そして多数派言語である英語の教育も受けながらの発達がとても大切です。
では、次回からは2カ国語での読み書き能力の習得についてお話していきたいと思います。
ブレット・カミング プロフィル
◎愛知県立大学外国語学部英米学科准教授。QLD州グリフィス大学卒(日本語・日本史専攻)、サザン・クイーンズランド大学大学院応用言語学修士課程修了。ケンブリッジ大学連合で大人向けの英語教育講師免許を取得。「バイリンガリズム」の研究以外に、「日本人英語学習者の対照修辞学」「自己確立と言語教授」「言語・文化と言語方策における関係性」などがある。現在いくつかの「バイリンガリズム」に関連した執筆を行っている。バイリンガル教育に対する興味、関心のある人は、以下より直接の連絡が可能
Email: bcsensei@protonmail.com
Web: brettcumming.weebly.com