2カ国語での読解力があるということは、グローバル的(人的な面はもとより、社会にとっても国家にとっても)にたいへん重要なスキルであり、読み書きに関しては、成長の過程でかけがえのない財産となります。しかし、子どもが2カ国語を流暢に話せたとしても、読み書きは自然に発達するスキルではありません。少数言語(特に読み書き)を発達・維持させるように努力しなければ、能力は不安定になり、就学後3年以内に言語消失の傾向が出る場合もあるのです。今回は、簡単な戦略を紹介したいと思います。
今のグローバル世界では本を通して楽しくかつ安く学べることが多いので、読書は重要です。そして上手になればなるほど、読書は享受できる娯楽にもなります。
同時に2カ国語で読む力を身に着ける事例は、逐次的に習得する場合や、多少事例が少ないですが、実は3歳からでも、アルファベットの文字を区別することはできます。ただ、両言語の基本ができてからの方が読書法の習得は早く、話したり聞いたりする力が備わった後で読むことにトライさせてあげる方がいいでしょう。
とにかく親は、子どもがなるべく小さいうちから本に触れさせる価値があることを知るべきです。乳児期から頻繁に絵本を読んであげることは、素晴らしい教育の始まりなのです。早い時期に読み聞かせを始めることは、子どもとの絆が強まるという意味でも親にとってのメリットもありますし、例え出てくる単語を知らなくても、物語を理解できることは多いはずです。
少し大きくなったら、載っている言葉や文字の存在に気付かせるために、指で文字をなぞりながら読むのも良いかもしれません。時間が経つとともに、ある言葉やその言葉に関わる意味を把握し始めます。子どもがそうしたことを自然に感じ始めれば、両言語を同時に習うことに全く問題はありません。そして、読書は子どもの語彙力と認識を広げ、話すスキルも増加する上、結果として、さらに複雑な言語発達へと繋がります。
では、いつごろから読んであげるのが良いのでしょう。基本的には、なるべく子どもが小さい時期から始めるのが良いと言われていますが、あくまでも無理をさせず、子どものペースでやることが極めて重要です。
どこまで読めるかという基準も、教育者と研究家によっても意見がいろいろ分かれますが、原則としては年齢に大きく左右されます。
読書能力を身に着ける方法はさまざまです。例えば、音素アプローチや言葉全体を理解させる方法など分野は幅広くあります。詳しくは各自でお調べいただくことをお勧めします。
読み聞かせる書籍のレベルは、子どもの言語レベルより少しだけ高めが最も望ましいでしょう。大切なポイントを要約して繰り返したり、感情を込めたり抑揚をつけたりして物語を楽しく読んであげることによって、本人が読書に関心を持ち、少しずつ上手に読むことを覚えていくことに繋がります。
では、次回はよくある質問・問題への対応・対策についてお話していきたいと思います。
ブレット・カミング プロフィル
◎愛知県立大学外国語学部英米学科准教授。QLD州グリフィス大学卒(日本語・日本史専攻)、サザン・クイーンズランド大学大学院応用言語学修士課程修了。ケンブリッジ大学連合で大人向けの英語教育講師免許を取得。「バイリンガリズム」の研究以外に、「日本人英語学習者の対照修辞学」「自己確立と言語教授」「言語・文化と言語方策における関係性」などがある。現在いくつかの「バイリンガリズム」に関連した執筆を行っている。バイリンガル教育に対する興味、関心のある人は、以下より直接の連絡が可能
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Web: brettcumming.weebly.com