由良亜梨沙さんインタビュー、シドニーで活躍する日系人女優

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コロナ禍以降、初の舞台に臨む由良亜梨沙さん

 現在公演中の舞台「Top Coat」に日系オーストラリア人の役として出演する由良亜梨沙さん。多方面で活躍する由良さんに女優にいたるまでの来歴や、今回の舞台の見どころなど、お話を伺った。
(インタビュー・文=阿部慶太郎 写真=馬場一哉)

――女優、ナレーター、脚本家、太鼓の奏者など、多方面で活動されていますが、バックグラウ
ンドをお聞かせ下さい。

 私は、親の仕事の都合で10歳の時にオーストラリアに移住しました。英語もあまり分からない状態でしたが、習い事としてタップ・ダンスを始めたんです。それがきっかけとなり、パフォーマンスというものに興味を持ち、そこからジャズ・ダンスやバレエも始めました。

――演劇に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。

 演劇に携わったのは中学3年生頃、学校の演劇の授業のカリキュラムで、セリフがたくさんある役柄を演じたのですが、当時英語がまだそこまで流ちょうに話せるわけではなかったにもかかわらず、セリフがスムーズに覚えられ、それが自信になりました。そして演じることへの楽しみを覚え、それから演劇への情熱を持つようになりました。

――今回の舞台ではどのような形でオファーがあったのですか。

 新型コロナウイルスの蔓延もあり、今回がコロナ禍後初の舞台の仕事で、以前一緒に仕事をしたことのある演出家からのオファーを受けました。その人が脚本家と一緒に日系オーストラリア人役として私のことを考えて書いたと言ってくれてすごく光栄に感じうれしかったです。日系オーストラリア人を描いてくれる脚本はあまりありませんので、感動してすぐにオファーを引き受けることにしました。そしてもう1つうれしかったのは女優の塚越喜美さん、舞台照明のボールドウィン恵都さんの2人も日系人だったこと。日系人パワーで頑張ろうと思いました。

左からボールドウィン恵都さん、由良亜梨沙さん、塚越喜美さん


――舞台の内容について伺えますか。

 舞台の時代背景は2022年の現在で、いろいろな人が経験している人種差別問題やジェンダー差別問題といった社会問題を劇中で取り上げています。主役のウィニーはネイル・サロンで働いているのですが、そこに客として来るケイトという、白人至上主義のオーストラリア人のテレビ局の映像編集者と中身が入れ替わってしまうところから話が始まります。そこから繰り広げられるドタバタ喜劇が描かれ、その中で、私が演じる役も入れ替わった2人に振り回されていきます。

――由良さんの役柄について教えてください。

 今回私は2役、アサミとユウコという役を演じています。アサミは日系オーストラリア人1世、日本で生まれ育ちオーストラリアに来た役で、ユウコは日系オーストラリア人2世で、生まれたのは日本ですが幼くしてオーストラリアに来たため、日本語がそれほど話せないという役です。その役を演じ分けることに非常に面白味を感じています。

 実際私自身は、アサミとユウコの間くらいで1.5世というのですが、自身の経験をアサミとユウコに分けて演じ、シェアするという今回の舞台は大きな挑戦ではありますが、そういった役を頂けたことをとてもうれしく思います。日本人の役でも多くの場合、普通の日本人観光客や、芸者などステレオタイプの日本人役ばかりで、英語が話せなかったり、バリバリ日本人の英語のアクセントを求められるケースがほとんどです。

リハーサルの様子(©Prudence Upton)


――日系オーストラリア人1世と2世を演じ分けるに当たり、意識されている点はありますか。

 まずは言葉ですね。アサミは英語を話せますが、ジャパニーズ・アクセントが残っていたり、話し言葉での違いがあります。アサミはネイル・サロンで働いていますが、日本人的な感覚を持っているので、仕事熱心かつ真面目で、主役のウィニー(中国系オーストラリア人)とは根本的に文化的背景の違いがあります。

――アサミとユウコが由良さんと似ていると思う点はありますか。

 アサミはポジティブで、人種差別を受けても良い意味でも悪い意味でもサラっと流してしまうんです。そういう意味では私と似ているかもしれません。ユウコは私よりも幼い頃にオーストラリアに来て、郊外の日本人がほとんどいないような場所で育ったという設定なので、結構人種差別に遭っているんです。そこでユウコはそれから現実逃避するためにテレビや本に没頭します。私も昔からそういうことがあった際、映画を観たり本を読んだりしていたので、共感できますね。

―― 最後にこの作品について本誌読者にメッセージをお願いします。

 社会問題を大きく変えるというのは、自分たち自身の何かを犠牲にしなくてはいけないかもれないというリスクがあるので、非常に勇気のいることです。しかし、みんなが少しでもその勇気を出せば変化が起こせるかもしれません。普段舞台を見に行かないという人も勇気を持ってお越しください! 劇中、日本語を話すシーンもあるのですが、そのニュアンスなどは日本人の方々にしか分からないと思いますし、楽しんで頂けると思います。

■Top Coat

会場:Sydney Theatre Company, Wharf 1 Theatre(Wharf 4/5, 15 Hickson Rd., Dawes Point NSW)
日程:開催中~8月6日(土)
Web : www.sydneytheatre.com.au/whats-on/productions/2022/top-coat

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