第164回 穂含月
ご機嫌いかがですか、れんです。
7月の古称は文月(ふづき・ふみづき)です。7月7日の七夕に歌などを書いた短冊を広げて夜風にさらして書道の上達を祈る行事があり、文披月(ふみひらきづき)と呼ばれていたのがこの名前の由来だという説があります。
また、現在、7月は梅雨が明ける時期で夏の始まりというイメージですが、旧暦の7月は暦の上では秋の始まりでした。そのころは稲穂が膨らむ月であることから穂含月(ほふみづき)もしくは含月(ふくみづき)とも言われていて、それが「ふみつき」に転じたという説や、稲穂の膨らみを見る月という意味の穂見月(ほみづき)が訛ったという説もあります。
7番目の月だから7月、というのはとても合理的で分かりやすいですが、「ほふみづき」や「ふくみづき」という和製の名前は季節感にあふれ、大いに風情が感じられますね。
さて、七夕の話は古代の日本人の心の琴線にも大いに触れたようで、奈良時代に編纂された最古の勅撰和歌集(天皇の詔で編んだ和歌集)である『万葉集』には、何と130首を越える七夕の歌が選ばれています。また、平安時代中期の女性エッセイストである清少納言の『枕草子』には、「七月七日は、曇り暮して、夕方は晴れたる空に、月いと明く、星の数も見えたる」とあり、日中曇っていたのが夜になって空が晴れたのをとても喜んだ様子が書かれています。
藤原道長、頼通親子、それに紫式部たちも彼女と同じ空を見たと考えると、何だかとても趣深いですね。
このコラムの著者
れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。作品“ふるさと”が国有財産として在豪日本国大使館蔵。豪・日・ドバイ・NZで作品展、大書ライブ、workshop多数。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に参加。シドニー総領事表彰。元号“令和” (総領事館蔵)、日立豪 “協創”揮毫。豪五輪委員会で応援大書。書道教室。LINEスタンプ販売中。
Web: renclub.net / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub