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古池や“トカゲ”飛び込む水の音 ー The Japanese Garden at Brisbane Botanic Gardens Mt Coot-tha/タカ植松のQLD百景

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QLD百景

第11回 古池や“トカゲ”飛び込む水の音 ー The Japanese Garden at Brisbane Botanic Gardens Mt Coot-tha

Text/Photo by Taka Uematsu

 祖国日本を感じる瞬間――海外に長く暮らす邦人なら、誰もが少なからず感じること。ましてや、コロナ禍で2年以上も一時帰国がままならないとなれば、なおさらだ。昨今、大抵のことはオンラインやバーチャルで済ませることができるが、心身共に日本を感じたいとなれば別の話。となると、何とかその「代替品」を身近で探したくなるのが人の常だ。

 そんな時、わが町にあって良かったのが日本庭園。幸い、ブリスベンにはかなり本格的なものがある。ブリスベンの高級住宅街でもあるインナー•イースト地域にあるボタニック•ガーデン(植物園)の日本庭園だ。

 亜熱帯の植生を生かした造りで、全てが日本と同じというわけにはいかないが、初めて訪れた際は「良くできている」と感心したものだ。

 庭園の入り口に掲げられた扁額(へんがく)には「遊翠園」とある。揮毫(きごう)したのは竹下登元首相。この庭園、1988年のブリスベン万博で日本パビリオンの目玉として造成された日本庭園が、閉幕後に現地に移設されたものというのだから、日本政府のお墨付き。本格的なのもうなずける。

 四阿(あずまや)に腰を下ろし、持参した日本茶のペットボトルをグビッと。ふと、視線の先を横切り庭園の池に飛び込んだのは南国特有のウォーター•ドラゴン。古池やトカゲ飛び込む水の音……なんて風流な余韻を楽しむ静寂も、クッカバラ(ワライカワセミ)のけたたましい笑い声にかき消された。侘び寂び(わび•さび)なぞは望めなくとも、視覚的、情緒的にはつかの間の日本を感じるには十分だろうと個人的には思う。が、そればかりは訪れる側の感覚次第なので、ぜひ、訪れて実体験してみて欲しい。

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