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冬のシドニーは退屈!? それでは、スキー場巡りなどいかが?

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興味があるもの何でもリポート!
BBKの突撃・編集長コラム 不定期連載 第23回

冬のシドニーは退屈!? それでは、スキー場巡りなどいかが?

2015年6月に来豪した元AKB48の板野友美さんに密着取材した「“追っかけ”にトライ!」(第22回)以来、実に2年ぶりにコラムを復活することになった。長らく「ガチンコ体当たりダイエット企画」を連載していたことで休載していたのだが、再開にあたり、バックナンバーを久々に読み返し赤面してしまった。

内容が初々しく、思いが先立ち、地に足が付いていないような印象を受けたからだ。2年前といえば移住から3年8カ月ほど。更に編集長としては1年半ほどと経験も浅く、自分の判断が果たして正しいのかと自問自答することもしばしばだった。あの頃に比べると確かに成長したことを実感する。毎日を消化しながら、果たして自分は前に進んでいるのだろうかと時に迷ったりはしていても、人はやはり着実に成長しているものなのだ。

一方で、若さゆえの熱が失われてしまっていることにも気付く。コラムの第1回(12年6月号「新編集部員BBKの生レポ」)では、運転免許を取得し、唯一の相棒だったキック・スクーター(思い出の品として今もデスク横に置いてある)から、選択出来る交通手段に車が加わった際の思いをこう書いていた。

「晴れて運転免許証を取得したその瞬間、目に映るシティの景色が変わった。世界が一変したのである。それまで横切るためだけに存在していた車道に対するベクトルは90度変わり、僕は道の先に想いを馳せるようになり、その結果、シドニーという街の持つ可能性のあまりの大きさに嘆息したのだ」

このような溢れる思いを文章にぶつけるような、初々しい書き方は今の僕にはなかなか難しい。悲しいかな、人はどんどん大人になってしまうものなのだ。

さて、前置きはこの程度にして、久々のコラム、今回は冬真っただ中ということでスキーを話題に書きたいと思う。

僕が大事にしている趣味の1つにスキーがある。幼少のころからスキーに親しみ、大学時代は学内最大のマンモス・スキー・サークルの会長を務め、卒業後はスキー業界に関わりたい気持ちと出版人になりたい気持ちの両立を目指し、スキー雑誌を発行する出版社に入社。編集記者として6年間、合計100冊近くのスキー雑誌を作った。その後、別メディアへ転職するも日本のスキー業界とは懇意にしてきた。

そして現在、オーストラリアで日本のスキー場の人気がかつてないほど高まっていることから、ニーズに応えるべく当時のコネクションやバックボーンを活用しながら制作したのが、日本のスキー・シーンをオーストリア市場に向けて紹介する英字雑誌「jSnow」だ。日本のスキー産業、更にはインバウンド事業の発展に貢献出来るよう、強行軍の取材を断行、魂を込めて作った1冊だ。取材活動を通して、オーストラリアのスキー雑誌の方々とも懇意になったのでコラボも検討している。ローカル・メディアとのコラボで出来ることの可能性は無限大。楽しみだ。

新創刊の日本のスキー・シーン専門の英字雑誌
新創刊の日本のスキー・シーン専門の英字雑誌

とまあ、シドニーにいる日本人にはそうそう他に並ぶ者はいないであろう、コアなスキー・フリークの僕なりに、残りのスペースではこちらのスキー場の情報を皆さんにお伝えしたい。

横のペリッシャー、縦のスレドボ

オ-ストラリア全土には調べた限りNSW州、VIC州にそれぞれ4カ所、タスマニア島に2カ所と計10カ所のスキー場がある。そのうち、僕が行ったことがあるのは3カ所、VIC州にあるマウント・ブラーとNSW州にあるスレドボ、ペリッシャーだ。うち、マウント・ブラーは20年前、バックパッカーとして来豪した際、日帰りバス・ツアーで数時間滞在しただけなので、今回はスレドボ、ペリッシャーに絞って紹介する。

スレドボ山頂の森林限界を超えたエリアにはワイルドな岩がゴロゴロしている
スレドボ山頂の森林限界を超えたエリアにはワイルドな岩がゴロゴロしている
横移動で数々のスロープを楽しめるのがペリッシャーの特徴だ
横移動で数々のスロープを楽しめるのがペリッシャーの特徴だ
スレドボの麓にはお店が立ち並ぶビレッジがありショッピングも楽しめる
スレドボの麓にはお店が立ち並ぶビレッジがありショッピングも楽しめる

スレドボ、ペリッシャーは、スキーヤーであり登山家の三浦雄一郎氏も5大陸最高峰走破の際に滑ったマウント・コジオスコ(2,228メートル)のある山群スノーウィー・マウンテンと呼ばれるエリアにあり、シドニーからおよそ500キロほど離れている。日本で長距離スキー旅行での運転に慣れている身からすると500キロは「まあ遠いけど、それほど大変ではない」というイメージだったが、それは大違い。高速道路に乗り、ひたすらハイスピードで雪山近くまで飛ばせる日本のようには交通インフラが整っていないためだ。

シドニーから3時間ほど南下し首都キャンベラへ。キャンベラの市街地を越え、更に1時間ほど南下するとスキー・ショップが軒を連ねるクーマという町に到着。更に1時間、西に向かうとスキー場への拠点となる、美しい湖のある町、ジンダバインに到達する。ジンダバインまでは休みなくストレートに向かっても5時間半ほどで、スキー場はそこから更に40分ほど離れたところにある。

ジンダバインには宿泊施設やお土産店、レンタル・ショップ、レストランなどさまざまな施設があり、ロングステイでも十分楽しめる。かつ、どちらのスキー場にもアクセスしやすく滞在の拠点に打って付けだ(ゲレンデの目の前にもホテルはあるが宿泊金額が半端なく高い)。なお、どちらのスキー場に行くにしてもナショナルパークの入場料を払う必要があるので覚えておきたい(1台当たり24時間29ドル!)。またペリッシャーにはスキーチューブという電車でも行くことが出来るので、ユニークな体験としてそれも選択肢に入れても良いかもしれない。

なお、オーストラリアでは雪山に向かう際、4WDではない車はチェーンを携行することが義務付けられているので(罰金が科せられる)、持っていない場合は途中、クーマの町で借りられるので覚えておくと良いだろう。

さて、肝心のスキー場だが、どちらもとても1日で全てを回りきることは出来ないほどの規模で、スロープも自然の地形を生かしたワイルドなものが多くエキサイティングだ。麓は人工降雪機の特徴が強い雪質だが、上部は標高が高く気温が低いため締まっていて悪くない。降雪量はさほど多くないのでパウダー滑走を楽しめる機会は少ないものの、日本のようにコースががんじがらめにオンオフ分けられていないため、ツリーランのようなサイドカントリー・スキーイングを容易に出来るのもうれしい(もちろん危険なエリアには柵があるのでご安心を)。

ペリッシャーは総リフト数48と日本最大の志賀高原に匹敵する規模だ
ペリッシャーは総リフト数48と日本最大の志賀高原に匹敵する規模だ
スレドボの特徴は標高差。長距離のロング・クルージングを楽しめる
スレドボの特徴は標高差。長距離のロング・クルージングを楽しめる

両スキー場の大きな違いは横方向への広がりと縦方向の落差と言えるだろう。オーストラリア最大規模のペリッシャーはバラエティ溢れるコースが奥へ奥へと連なる。日本のスキー場で言えば長野県の志賀高原や菅平高原のようなイメージに近い。一方スレドボは縦の標高差がペリッシャーの倍近くあり、滑走距離を長く取ることが出来る。新潟県の苗場がイメージに近いが森林限界を超えたピーク上部は広々としており、サイド・カントリー的な楽しみができるコースもあるのでバリエーションは更に幅広い印象だ。

と、良いことを書き連ねたが最大の問題点がある。それはリフト・チケットの代金。1日券が日本円で1万円は下らないほど高額なのだ。だが、それでも行く価値があると思う。冬のシドニーはつまらない、こっちのスキー場は大したことないなどと思っている人にはぜひ一度その重い腰を上げてみて頂きたい。新たな発見がきっとあるはずだ。

今回はさらっとした紹介になったが、ニーズがあれば、より詳しいスキー場紹介、ジンダバインの町のレストランやショップ紹介など、きちんとした特集も今後組んでみたいと思う。リクエスト頂ければ幸いだ。

恐らく日本のスキーリゾートで食べたメニューをシェフが再現してみたのだろうが……、カレーとは似て非なる謎の一品(ペリッシャー)
恐らく日本のスキーリゾートで食べたメニューをシェフが再現してみたのだろうが……、カレーとは似て非なる謎の一品(ペリッシャー)

P.S.
余談だが僕はスレドボのゲレンデサイドで雪の上を野生のウォンバットが歩いている姿を見た。こんな経験、オーストラリアでしかできない。また更に余談だが、ペリッシャーで面白かったのがゲレンデ・レストランにカレーとラーメンがあったこと。日本のスキー・ブームがこんな形でも表れるのか、と嬉しくなりカツカレーを注文したのだが、かつて経験したことがないレベルのまずさに悶絶した。ググればレシピくらい出てくるだろうに……、やれやれ。


<プロフィル>BBK
2011年来豪、14年1月から日豪プレス編集長。スキー、サーフィン、牡蠣、筋子を愛し、常にネタ探しに奔走する根っからの編集記者。齢30後半♂。読書、散歩、晩酌好きのじじい気質。

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