編集部BBKの突撃レポート
不定期連載第8回
【検証】どのくらい使える? コスト・パフォーマンスは?
うわさのレンタル・ポケット
WiFiを実際に日本で使ってみた
既にご覧いただけた方もいるかもしれないが、5月上旬、日豪プレスでは日本のカルチャーや魅力を現地オージーに紹介する英語雑誌「jStyle」の最新号を発行した。
今回発行した「jStyle」では、ここ数年、オージーの間で旅先として急激に人気を高めている日本のスキー・リゾートにフィーチャー。それに際し、3月上旬、僕は美人オージー・ジャーナリストのセシリアさんとともに長野・新潟の各スキーエリアへ10日ほどの取材旅行を敢行した。しばらくオーストラリアを離れ、日本のスキー・リゾートを美女とともに探訪することになったわけだが、しかしどこで何をしていようとも、新聞・雑誌など製作物の締め切りは変わらない。
取材の時間が長くなればなるほど、その分制作にかけられる時間が減るわけだが、スキー・リゾートでの取材となると、各エリアすべて1日がかりとなる。10日間の取材旅行は、10日ほど締め切りが前倒しになることと同義であり、1カ月に1度発行の媒体において10日ほど作業の時間が減るということは、制作の際の負担は通常の1.5倍に跳ね上がる計算になる(1日平均10時間の仕事量であれば今回のケースでは1日平均15時間!)。つまりだ。帰国後、気持ち良く日々の業務をこなしつつ快適に締切日を迎えるためには、取材旅行の10日間においても、通常の勤務時に近いペースで仕事をさばくことが重要になる。連日の徹夜作業地獄の末に締め切り日を迎えないためにも、僕には出張中に効率良く仕事ができるインフラを事前に整えることが必要だった。
出張時の最強の助っ人「ポケットWiFi」
さて、そんなわけで僕は今回、初めてポケットWi Fiなるものを試してみることにしたのだ。普段、僕が使っているスマホでは、国際ローミングももちろん可能だ。ちなみに国際ローミングとは普段契約しているサービス事業者のサービス・エリア外であっても、提携先の事業者のサービスを利用して同様に通話、ネットなどが可能となるサービス。海外出張の際に利用したことのある人もいるだろう。しかし、国際ローミングは値段設定がかなり高額であり、緊急時以外には使わない方が無難というのが一般的な認識だ。例えば、国際ローミングを利用してスカイプでテレビ電話を1時間ほどするとその請求額は25万円ほどになるとも言われている(もちろん、国際ローミングでそんな使い方をする人は皆無だろうが)。
ところが、ポケットWiFiを利用すれば、通信料は定額で使用制限はない。それにもかかわらず価格設定はかなり安い(今回僕が利用したのは2週間使い放題プランで90ドル)。日本にいながらいつでもどこでも普段オーストラリアで使っているスマホでネットに接続し、仕事のメールの確認ができる。また緊急の際もスカイプ電話が利用できるなど、たいへん便利だ。
また、ポケットWiFi1台で最大5機器まで同時に接続できるのも大きな魅力だ。出張時はもちろん、夜はノートPCで作業をすることになるのだが、その際、スマホとPCを同時にWiFi接続できるのが嬉しい。また、オーストラリアではパブリックな場所ではフリーWiFiが飛んでいることが多いが、サービスの囲い込みが通例の日本では、フリーWiFiを見つけるのは至難の業だ。ましてや、今回の取材先は日本の雪山。ホテルがWiFi対応していないケースも想定できるため、ポケットWiFiの契約は必須だった。
もちろん、これまでポケットWiFiを使用したことのない僕にとって、一抹の不安はあった。WiFiという名前ではあっても携帯電話の回線を使っているに過ぎない。本当に雪山でもつながるのか。バッテリーのもちが悪いという話も聞く。まして気温の低い雪山で1日バッテリーが持つのかなどだ。しかし、それらの心配は杞憂であった。
契約は「これで終わり?」というくらいイージー
成田空港の到着ロビーから成田エキスプレスに向かう途中でポケットWiFiをピックアップ。ただ、名前を言って受け取るだけで煩雑な手続きは何もなかった
契約に際し、僕はオーストラリア国内に5店舗を構える通信事業社エーブルネットに連絡をした。旅行者から在住者まで、オーストラリア国内での通信に関するさまざまなニーズに応えるサービスを展開している同社では、国外に出る人に向けたレンタル・ポケットWiFiを提供している。担当者から「インターネットで必要事項を記入すれば契約は完了」と教えられ、すぐにネットで契約。この間わずか5分。その後、同社からポケットWiFiのピックアップ方法がメールで送られてきた。成田空港の指定されたカウンターに行けばピックアップできるという(関西国際空港、福岡国際旅客ターミナルでもピックアップ可能)。「ネットで申し込み→空港でピックアップ」、実際に手に入れるまでに要した作業はわずかこれだけだ。長いフライトの後だけに、少しでも早くさまざまな情報を確認しておきたいビジネス・パーソンにとって、日本に着いてすぐにネット環境が使えるのはかなり助かるだろう。ちなみに今回僕が手にしたのはソフトバンクのポケットWiFiだった。僕が行く予定の場所では最もつながるからという理由だが、その機種の選択も事前に旅程を伝えたエーブルネットのスタッフが行ってくれた。「電波がなく、使えないのでは?」という心配はこれでほぼ解消された。
バッテリーのもちはどうか
都内移動中もスムーズに仕事が進められた(都内品川駅のスタバで)
ポケットWiFiの電源を入れ、スマホのWiFi設定画面でポケットWiFi本体に書かれていたパスワードを入力するとネット回線は早速アクティブに。インターネットもさくさくできる。試しにPCを起動しこちらでもネットに接続し、スピード感を確認する。日豪プレスのウェブサイトを閲覧する限りではオフィスのネット環境とほとんど変わりない印象。よほど特別な使い方をしなければスピードに関しては問題ないと言えるだろう。メール・チェックでももたつくことなく、すぐに最新メールをダウンロードできた。
雪山に移動してからも、たびたびメール・チェックやブラウジングなどを行ったがほとんど不便を感じることはなかった。時折、電波の弱いエリアでもたつくことはあったが、これは通常、携帯電話で感じる程度のものでほとんど問題なかったと言えるだろう。取材をしながらも、空き時間を使ってのメール返信、スカイプ通話などを行えたことで、細かい仕事を溜めずに日々を乗り切ることができた。
ただ1点、気を付けなければならなかったのはバッテリーのもちだ。気温の低い雪山ではバッテリーの減りが通常より早く、付けっぱなしにすると実感では4〜5時間で切れる印象だった。だが、これは使用しない時にはオフにしておくなどすることで対処できた。バッテリーのもちに関しては、やはりポケットWiFiの課題だったようで、ネットではバッテリーの容量をウリにしたモデルが多数紹介されている。この流れを見るに、遅かれ早かれすべてのモデルがバッテリーのもちの良いものに取って変わるのは時間の問題だろう。
1度に何台も同時接続できるのが嬉しい
また、先述した通り、ポケットWiFiの大きな魅力は1度に何台も接続できる点だ。夜には日中、スマホで撮った写真や記入したメモなどをPCに飛ばすなどし、情報を整理していたが、PCも同時接続していたため、作業はかなりはかどった。ともすると時間を取りがちなさまざまな作業がスムーズに行えたのもポケットWiFiのおかげと言えるだろう。また、複数台同時接続できることで、隣の部屋にいる同行者のセシリアさんがその恩恵に与れたのも大きかった。
必要な時だけWiFiが使えるスポットを探せばいい、旅行時にお金をかけてまでネットに常時接続できる環境は必要ないという人もいるだろう。しかし、そんな人にこそぜひ1度ポケットWiFiを試してみてほしい。普段当たり前にあるネット環境がないことで、逆にストレスを感じてしまっていた面があったことにも気付くはずだ。
レンタル・ポケットWiFi、少なくとも僕にとっては旅行時に欠かせないツールの1つになった。