第12回 水面に浮かぶ追悼の日の丸
Story Bridge / Brisbane
Text/Photo by Taka Uematsu
Text & Photo: Taka Uematsu
ストーリー・ブリッジは既出だが、今回は例外として2度目の登場となる。7月8日の正午過ぎ(当地時間)に飛び込んできた祖国からの凶報については、ここでは詳しく触れるまでもない。この国で暮らす日本人や日系の人びとの全てが、度合いの違いはあれども驚愕したには違いない。
今や世界有数の親日国家の1つでもある豪州は、日豪関係がより深化した時代に長く宰相の座にあった「大切な友人」たる故人に対して、最大限の敬意を持って哀悼の意を表した。
その最たるものが、シドニーのオペラ・ハウスなど各主要都市のランドマークの日章旗カラーでのライトアップだった。
当然、豪州第3の都市ブリスベンも例外ではない。ブリスベン市とQLD州がそれぞれの管理する建造物を赤と白に照らした。
その中でも、一番美しく心に響いたのが、今回の写真の光景だ。橋桁のライトアップもそうだが、水面に映った日の丸の揺らぎが動揺する心を映しているようで、橋を見上げながら涙を堪えていた。故人と大学が同窓で思い入れが強い筆者だからこそ、そこまで感傷的になるのかと思いきや、それだけではなかった。この写真をフィーチャーした筆者のFacebookの投稿は約30件もシェアされて、日豪両国の多くの人の目に届いたようだ。
いまだかつて、ここまで豪州でその死を悼まれた日本人はいただろうか。死してなお、日豪両国の関係性の深さと大切さを知らせる機会を創り出した安倍晋三元総理大臣の功績は非常に大きい。この国で生きて行く限り、日章旗カラーに照らされたストーリー・ブリッジを忘れまい――。この地で生きる1人の“日本人”として。