第13回 おらが街のスタジアム/サンコープ・スタジアム Suncorp Stadium / Brisbane
「サンコープ・スタジアム」と命名権でご当地銀行の名を冠する前は、「ラングパーク(・スタジアム)」と呼ばれ、日本のNHK同様に商業的名称を忌避する国営放送ABCは、今でもそう呼ぶ。更には、FIFA、AFC主催のフットボール国際大会での使用時は「ブリスベン・フットボール・スタジアム」となる。まぁ、呼び名は変われども、どれも同じスタジアムであることに変わりはないのだが。
1914年の開設から87年目の2001年に始まった大規模改修を経て、国内有数のモダンなスタジアムに生まれ変わった最大5万2500人収容のスタジアムは、近年の他州の新スタジアム建設ラッシュ以前には、欧州基準を知る選手たちをして「豪州でも1番のスタジアム」と言わしめる存在だった。
市内中心部からのアクセスの良さもピカイチだ。ブリスベンCBDからは、スタジアム至近のカクストン・ストリートの大にぎわいを横目に徒歩20分少々。大きなイベント時に主要駅から出るシャトルバスなら、ものの数分で到着する。
そんなスタジアムを襲った予期せぬ大危機は11年に起きた。土地表面を掘り下げて建っている立地の特性もあって、ブリスベン大洪水でピッチ全面が水没する大被害を受けたのだ。それでも、甚大な被害を乗り越えて、洪水後初めての試合でスタンドを大観衆が埋めたのは感動的な光景だった。
ブリスベンの発展と共に多くのドラマを刻んできた、おらが街のスタジアム。その次なる大仕事は、来年開催のフットボール女子W杯。更には、10年後にはブリスベン五輪が控えている。今後、このスタジアムでどんな物語が紡がれていくのか──。楽しみでならない。