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日豪フットボール新時代「理想」第130回

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第130回 理想

ブリスベンの次はどこに飛躍するのか(©Olympic FC)

 あの「ポスタコグルー革命」以来、日本フットボール界におけるオージー・コーチへの注目は高まるばかり。セルティックに引き抜かれた名将の後を襲ったケビン・マスカットは戴冠間近。J2ではピーター・クラモフスキーが山形悲願のJ1復帰の夢をつなぐ。

 最近、「次に注目すべきは」とよく聞かれる。そんな時に挙げる人物について今回は書くが、正直、その知名度はまだ低い。何せ、Aリーグ監督経験もなく、今はQLD州1部(豪州2部相当)NPLのオリンピックを率いるコーチは、普通の人のレーダーには掛かるまい。ただ、豪州フットボール界では玄人筋によく知られた名前だ。

 ベン・カーン、ロンドン出身の34歳。若くして選手としてのキャリアを断念した男は、失いかけたフットボールへの情熱を、失意から逃れるために単身渡った母の祖国豪州で取り戻した。

 QLD州有数の景勝地ヌーサでコーチ業を始めてからは、まるで水を得た魚のように順調な成長を見せた。30歳を前にして国内若手コーチの有望株として知られる存在となり、Aリーグのクラブからもアシスタント・コーチの座をオファーされるまでになった。

 それでも「監督」たることにこだわる彼が4年前、次なる挑戦として選んだのが、オリンピックで自らの理想をピッチ上で体現するチームを己れの全権を持って作り上げることだった。さまざまな不運が重なり、オリンピックは彼の指揮下で州王者に戴冠できていないが、国内では他に類をみないクオリティーのフットボールはピッチ上で異彩を放つ。

 玄人筋には彼の理想のアタッキング・フットボールをより高いレベルで見たいと思う人間は少なくない。かく言う筆者もその1人 だ 。何よりも彼自身が「自分の理想のフットボールはスキル・レベルの高い日本でなら必ずより高度に具現化できる」と自信を隠さない。豪州で爪を磨く若き理想家と共に夢を追うようなクラブがあるならば、その未来は明るい。間違いない。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカのつぶやき「日豪戦取材でシドニーに4日ほど滞在した。試合周辺の雑感はウェブ版のルポに詳しいが、とにもかくにも豪州フットボールに関して、何かと『気付き』の多い滞在となった。危機感であり、将来への期待であったり……。感じたことは、少しずつでも書き表していきたい」





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