第16回 結局のところは、ジャカランダ/ニューファーム・パーク
Text by Taka Uematsu
Photo by Izumi Cantor
暖かい陽気に誘われ、そこかしこで満開のジャカランダ。四季なんてあってないような亜熱帯のブリスベンに本格的な夏を告げるのは、和名を紫雲木という南米原産のこの花木。毎年、あるタイミングが来るとブリスベンの街は淡紫に染まるのだ。
数回前の当稿で、ニューファーム・パークは既に取り上げた。しかも、その中で、そこがジャカランダの名所であることにも触れた上で「生来、へそ曲がりな筆者は、豪州の地で日本での桜と同様の扱いで持てはやされるジャカランダが、正直、それほど好きではない。そもそも外来種だし、なかなか散らずに風情がない……」とディス。これには、我ながら苦笑いを禁じ得ない。
そんな我が家の軒先にもジャカランダの老木がある。1度咲くと長く花を散らし続けるその木を密かに「ジャマナンダ」と呼ぶ筆者には、そもそも“もののあわれ”を語る資格はない。では、なぜ今回、ジャカランダを取り上げたのか。それは、もう、やはり奇麗だからに尽きる。生来のへそ曲がりにも美しさを感じる感覚は残っているのだ。
先日、当地の着物愛好会の皆さんが、ジャカランダの樹下に集いお花見を行う様子がSNSに上がってきた。ニューファーム・パークで開かれたそのお花見は、野点まで行われるような本格派。さまざまな色目の美しい和服姿の女性たちの装いと背景に映り込むジャカランダの淡紫が良く調和していた。
掲載許諾の関係もあるので、そのお花見自体の写真でなく、公園内でも一、二を争う花ぶりの古木にご登場を願ったのが今回の写真。
ジャカランダを愛でつつ頂くお茶の味たるや格別だろうな。